第5話 「またあいにくだよ」

 星流夜

 貧乏くじ男、東奔西走

 流れ星、東奔西走

 運流男



「またあいにくだよ」



 こんな夜は早く寝よう

 月を見ていると思い出す

 だけど会えなくて

 夢だったのかなあ

 青い空は青くて赤い空は赤くて

 私も溶けて混ざる気がする 

 でも暗い夜空だけは私を拒否してる

 全部気のせいかもしれないけど




 〇〇〇〇〇〇




 一人の男が喫茶店に入ってくる。もう夜も遅い。



「ウインナーコーヒーをひとつ」


「かしこまりました」



 ホイップの乗ったコーヒーが男の瞳に映る。すると突然驚いたように笑いだした。



「うわマジで?」


「どうかされましたか」


「いいの、こっちの話」



 喫茶店に入ってきた時のどこかおずおずとした様子が一変して、陽気な雰囲気になる。



「マスターって車乗る人?もうタイヤ変えた?」


「いえまだ」


「またあいにくの天気だってよ」


「もう少し待ったほうが無難ですかね」


「うん」



 世間話が突然変わる。



「ねえ、実は俺二重人格っぽいんだよね。ていうか別人の体の中にいるっていうか」


「でしょうね」


「やっぱりここってそういう」


「いいえここは喫茶店です」


「なんとかしてくれよ」


「無理ですね」


「せめて何かアドバイスを」


「そうですね、ギャップを減らす」


「こいつと?それが違いすぎてダメなんだよ」


「いいところも探してみて下さい」


「星に願い事してたときかわいなって思った」


「そんな調子で」


「ウインナーコーヒー初めてだけどうまかった」


「ありがとうございます」


「こっちこそ変な話聞いてくれてありがと」

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