第2話 「まだ会いに来ないで」

 飴と傘

 コップの中の漣

 漣の中の傘

 飴とコップ



「まだ会いに来ないで」


「なんで?」



 さざなみが起きる。彼女は水たまりをバシャバシャと踏んで走り抜けていく。黄色い傘が彼女を濡らすまいと頑張っているが、追いついていない。


 夕日を浴びる喫茶店。先程まで降り続いていた雨は上がっていた。色とりどりの花が水滴をつけている。傘をばさばさっとして水気を切って傘立てに入れる。靴も服もさっと水を落としてからお店のドアをゆっくりと開けた。



「いらっしゃい」


「あ!ツッキー!」


「しー、お店では静かにね」


「はーい」



 誰も座っていないカウンターへその子は迷わず座る。マスターとずっと話をしている。



「雨、嫌じゃないの?」


「嫌だよ?髪がはりつくから」


「結構濡れてるけど」


「ちょっと走ってきちゃったから」


「あ、そうだ飴は好き?」


「好きだよ!口の中で甘い水になる。いつのまにかとけてなくなる」



 もらったレモン味の飴を早速なめていく。ほっぺたは飴一つ分ふくらんだ。ふと飲みきったオレンジジュースが落ちた。


 からーんからん


 いつの間にか他の客がいなくなっていて、人間は彼女とマスターだけになっていた。そこにいた子鬼がコップを拾ってマスターに渡し、またカウンターに座った。マチコの隣には大きな怪物がいた。



「もーマチコちゃんは真似しちゃだめだよ」


「なんで?」


「オレは子鬼だからいいんだよ」


「じゃマチもコーニになる!」


「「絶対ダメだ」」



 怪物とマスターが声を揃える。

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