灯る幻ばかりを追っている 『灰色世界』

蛇のようにまといつく風が

少女の長い髪を揺らした

ただひとりだけ誰もいない

自分の影があるばかり


どうして世界は時を止めたの

終わりを告げる鐘もなく

どうしてみんな消えてしまったの

声は低い雲へと消えた


箱庭には神はいない

覗いて遊ぶ腕もないから

少女はひとり歌っているの

孤独な鼓動が止まるときまで


灯る幻ばかりを追っている

マッチ売りの少女のようで

通りすぎる人影もない

憐憫のひとつも少女にはない


どうしてこれで世界と言えるの

閉じた時間を繰り返すだけ

どうしてわたしだけしかいないの

ガレキの砂塵がとぐろを巻いた


箱庭を愛でる神はいない

そそぐ宝石の視線もないから

少女は今日も歌っているの

いのちの炎が消えるときまで


灰色の世界で少女がひとり

黒髪を風になぶらせながら

救いのときをただ待っている

錆びた歯車が動き出すまで

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