そうしたらほらいつもどおりだ 『詩歌の日』

いつもより早く眠ったきみ

ぼくになんにも言わないで

さっさと電気を消してしまった


具合が悪いのだろうかと

当然心配するじゃないか

なのに全然お構いなしで


ちいさく弱い動物は

不調を限界まで隠す

食うか食われるかだからね


きみも我慢をしているの

単に言いたくないだけか

ふてくされているのかい


今日は詩歌の日だというのに

なにも思い浮かびやしないよ

どこにも飛んでいけないんだよ


青い水面の反射光とか

生まれては死ぬ宇宙とか

発光をするニューロンだとか


黒い砂漠の寒い夜

巨大な風車をまわす風

おいしいもののことだっていい


世界に没入できなくて

ひとりぼっちのぼくがいる

きみだけを思うぼくがいる


今日は詩歌の日だというのに

素敵な歌が浮かんでこない

ぼくは怖がりなんだよ


またあした日が昇ったら

明るくおはようと言って

どうか安心させてほしい


いつでもきみが苦笑いする

歌をたくさん歌うから

呆れるぐらい歌うから


そうしたらほらいつもどおりだ

笑いあっていつもどおりさ

それまでおたがいゆっくりしよう

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