その一端だと思ってた 『うしろむきのアウラン』

どうして伝わらないんだろう

おんなじ言葉を話しているのに

まるで言語が違うみたいだ


ぼくの言葉が判らないのかな

そう言い聞かせて逃げたくなるんだ

梨の礫の夜は長い


たとえば青空ひとつにしても

嬉しかったり哀しかったり

一枚の絵を見るにしても

好きだったり嫌いだったり


好みや気分の差なのだろうか

知らないふりをしているのか

見えない壁があるようだ


ただ普通に話したいから

話を聞いてほしいから

声をあげてみるのだけれど


なんにも伝わらないようだ

おんなじ言葉を使っているのに

誰にも届かないようだ


奏者によって音色が違う

楽器の差だと考えてたけど

単純な話じゃないんだね

それじゃあ一体なにが悪いの


気持ちいい言葉だけじゃないのは知ってる

だからこそ人の言葉がほしい

なぐさめられたいわけじゃないけど

今はだいぶそんな気分だ


冷たい水が冷たいように

宇宙に果てがないように

いちごが赤くなるように


その一端だと思ってた

おんなじ言葉を話していても

心の端すら届けられない

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