澄み渡る青に誓って 『インシグニスブルー』

丘を染めあげる花たちが

だれにも見られずいのちを終える

そのようなことがあってはならない


こまかなうぶ毛にかがやくうてな

空からこぼれたような花弁は

世話をする数多の手により成される


ひとつの文句もひけらかしもなく

一心に育つ子らにそそぐ

春のさかりの陽にも成される


ひろがる青はいつしかぼくらを

丘のふもとまで運び去る

その色彩で釘づける


ひろがる青にいつしかぼくらは

咲く花たちの一部になる

空色をした風になる


しきりにささめく花たちが

だれにも知られずいのちを終える

哀しいことがあってはならない


大地の深くで伸び続けている

その繊細な根を絶ってはならない

断つその日まで絶ってはならない


孤独を孤独と思わない

そのけなげさがうつくしい

ひとの営みもどうかそのまま


今は出会えないとしても

丘に登ればきみにまみえる

まぶたの裏でもまた会える


清廉な矜恃を持つきみを

澄み渡る青に誓って

愛している

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