その世界には 誰にも行けない 『白い宇宙』

見ごろを迎えた桜並木が

静かに静かに先へと続く

雪国のよう奥が見えない


人が目を細めてはすぎ

そのしたで酒を飲み

言葉や微笑みを交わし


どれほど繰り返されただろう

今年はそれができないという

花は咲くのにできないという


さかりを迎えた桜並木に

規制線が張り巡らされ

幽玄の国は閉じ込められて


その世界には 誰にも行けない

その世界には 誰にも行けない


窮屈なニュース世は病んで

言葉とうらはら強要をする

仕方がないが胸が震える


並木は白くそこにあり

深まる春を刻んでいく

宇宙が生み出されては消え


美しくあれ凛として

花の命を薫らせて

風にさざめき揺れながら


黄色いテープの向こう側

木々は知っているのだろうか

人の営みも有限と


そこから先には 誰にも行けない

そこから先には 誰にも行けない

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