地上をかれらが塗り替えるとき 空を映す泉が現れ 『青の使者』

ネモフィラたちは妖精だ

青をもたらす使者なのだ


地上をかれらが塗り替えるとき

空を映す泉が現れ

晩春は初夏へと移ってゆく


ごらんよ使者がはしゃいでいる

一堂に会する時期だから

仲間が集うときだから


桜は青と同化できない

うらやましかろうと使者は笑む

そよ風のなかでさざめいている


花の姿をした使者は

ほら着地点でおしくらまんじゅう

どこもかしこも青ばかり


会いに来て

会いに来てと言う

揺れながら


わたしたちが青いうちにと

地上に留まるあいだにと


春は別れの季節と言うが

ネモフィラたちは出会いをくれる


ほのかに夏を含んだ日差し

すがすがしさをいだく自分を

受け入れてくれる花言葉


いちど目にしたら忘れられない

空色たちの集まりは

眼窩にさえも焼きつくようで


しもべとなって訪れて

大集会に参加したいな

日ごろの喧騒を抜け出して


会いに来て

会いに来てと言う

きらきらと


わたしたちが還るまえにと

地上に集うあいだにと

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