音をさがす 指で探って 摘まみ取る 『音めぐりのバラッド』

音をさがす

指で探って

摘まみ取る


弦は迷路の道しるべ

奥へ奥へとぼくをいざなう

さあさこっちと迷わせる


まるで囚われの身の少女

心奪われた少女のように

常世の国から帰れない


音がうたう

指が紡いで

なびかせる


弦は現世うつよの道しるべ

絹のように光を受けた

真白い腕が手招くように


どちらの道を選ぼうか

ぼくは常世と現世のはざまで

時を忘れてたわむれる


このまま聴いていられるのなら

消えてしまって構わない

肉体などはただの器だ


弦はぼくを導くしるべ

詩であり師であり史であり死である

すべてにつながっている糸だ


音にまよう

指が違えて

踏みはずす


まだまだ形にならないが

こうしてぼくも吟遊詩人バードとなった

音色を自分で操りたくて


しるべはひとつと限らないから

ゆめゆめ安心召されるな

つねに聞き耳立てるべし


すっかりぼくは弦のしもべ

今やうたわされている

やがては音となるだろう


やがては音となるだろう

常世と現世の橋渡しをする

そういう弦のひとつとなろう


音はさそう

指が招いて

とりこの身

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