無作為に拾われ捨てられるぼくはいったいなんなのだろう 『ぼくと言う名の死』

無作為に拾われ捨てられるぼくはいったいなんなのだろう

恣意的に捨てられることとおなじではないのだろうか

自分以外のところで多くの意識が働いている

仕方がないかもしれないがぼくはそれを怖いと思う


声をかけあぐねたあのときにはもう運命は動いていた

少し驚いた様子のきみはぼくの知るきみではなかった

だいたい人のことなんて判るはずもないのだが

察するぐらいのことならできるしそうしようと考えた


隠れた亀裂は大きくなってそれ見たことかと具現化した

至らぬぼくは稚拙な勇気でやむを得ないと受け入れた

腹に抱えた冷たいものは今になっても凍ったままだ

きみがかち割りでもしない限りは何も変わらないだろう


ぼくは変わらず生きているけど毒にも薬にもならない

ただ存在をしているだけで現象にはなれないのだろう

そうだどう足掻いてもきみの現象にはなり得ないのだ

きみがぼくの現象に遠く及ばないのとおんなじことで


風が吹く

雲が流れる空を見ている

たとえばこんな感じの視点で

ぼくは漠然と立っている


移りゆく

季節のように心も変わる

直視するべき現実がある

別にきみのせいじゃない


使い捨てのような立場のぼくはきみのなんだったのだろう

友達という一時の瑞々しささえ感じてもらえなかったのか

決定的な魅力に欠けて行動力もないぼくのことだから

仕方のない結果なのだと納得をするしかないのだ


風が吹き

雲ひとつない空がある

寂寥を連れてくる青に

からの自分を打ち明けるしかなく


すぎ去った

過去に足を取られながらも

言うのだ

きみのせいじゃない

ぼくのせいでもないのだと


そうだ

現象における死は

決してぼくのせいじゃない

きみのせいでもないのだと


澄み渡る哀しみが沁みて胸が差し込む

ぼくは確かに存在するのに生きてはいない物である

誰の胸にも存在し得ぬその場限りの物である

無作為に拾われ捨てられる使い捨ての物だった




20180705

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