知っているよ きみが金木犀なのを 『金木犀』

知っているよ

きみが金木犀なのを

今は咲いていないけれど


季節がめぐれば

ぼくたちに歌いかけてよ

青青とした葉は生きている


このまえ月蝕があったのを

きみも知っていると思う

月のあかりが点滅したのを


万物には仕組みがあって

生かし生かされ動き動かされ

ぼくたちはそれを現象と言う


どうにもならないことでもあるし

どうにかできることでもあったり

そういうことでできている


待っているよ

きみの夕焼け色の花が

大気の色を変えるのを


季節がめぐれば

空色を別世界にする

桜のように愛している


命は存外短いもので

生者はときに振り回される

すべては唯一無二だから


万物には仕組みがあって

似ているだけでふたつとないもの

ぼくたちはそれを存在と言う


だからこそ出会いが嬉しいし

別れに心が折れてしまったり

よく歌われていることさ


きみが散っては咲くように

ぼくもぼくではないかもしれない

けれどもきっと知っている


きみが金木犀なのを

その宇宙の理を

知っているよ

いつも見ている




20180203

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