20180107〜

哀しみの涙が込みあげる 自分のための哀しみが 『水底の星』

哀しみの涙が込みあげる

自分のための哀しみが

哀しむための哀しみが


自己愛と呼ぶものだろうが

哀しいものは哀しいのである

とやかく言われてもである


心に水面が黒く在る

波に震えるかたまりが

冷たく重く主張する


詩を書いてはどうだろう

絵を描いてはどうだろう

しかしそれらは求められない


視界に涙が熱く在る

波に千切れるひとしずく

叶わぬ思いは水と成り果て


自己愛とはいけないものか

自己を愛せぬ人間が

他を愛すことができようか


自己という殻のなか

内的宇宙の底深く

降りられるのは自分だけ


深く沈んだ冷たい自己を

己が愛してやらなくてどうする

掬いあげてやらなくてどうする


承認欲求がなんだ

自己愛がなんだというのだ

至極自然な愛のかたちだ


込みあげてくる哀しみは

哀しむ自分にほかならない

自己があってこその思い


自分を憐れむ哀しみが

ひたむきに求めていることは

ありのままを愛されること


そんなあたたかな未来と

なぜ哀しいのかを考える

裁定者でもある自分がほしい


たとえ理解をされぬとしても

涙を理解されぬとしても

上を向いていられる強さ


哀しむための哀しみを

自分のためのものとして

包み込んで浄化する


光の許で浄化する




20180107

原題『oneself』

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