つぶやきが虚空に落ちる 雪のような美しさもなく 『リプライ』

つぶやきが虚空に落ちる

雪のような美しさもなく

雨のような音もなく


このぼくの言葉など所詮たわごと

がらくたのおもちゃの立てる物音

つかみどころのないフィクション


そらごとではないのだが

決して嘘ではないのだが

なんの力もありゃしない


いくつもの言葉を投げたとて

たどりつく地の見えないままに

ただただ流れていくだけだ


誰に頼まれたわけでなく

自分のために紡いでいて

独り言にすぎないけれど


雑踏に埋もれる声だとしても

それでもよしと思っていても

哀しみに突き落とされるのだ


期待をしてはいないだろうか

過度の期待は傷を負うから

けれどもそれは悪なのだろうか


街角のからくり時計が開くとき

見あげる人がいるような

やさしい時間を望んでしまう


大層なことは言わない だから

多くは望まない だけど

ぼくの心は打ちひしがれる


表現手法が何であれ

すべてが静かに風化してゆく

風雨に晒されるように


ちいさな望みも色褪せて

身のほどを思い知るだけだ

そうして立ち尽くすだけだ


名声がほしいわけじゃなく

同情も望んではいない

梨の礫が怖いだけ


ぼくはいったいなんなのか

考えるのが虚しくて


ぼくはいったいなんなのか

孤独と向き合うだけなのだ




20170604

原題『reply』

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