生きるって哀しみを伴うことだね 『斜陽』

生きるって哀しみを伴うことだね

別れが付随してくるからだ

生まれた時点で死を負うように


他愛ない日常で我に返った

永遠などはないのだと

そのあたりまえが恐ろしい


いつなにがあるのか判らないのに

時間を浪費することが

不意に怖くなってきた


別れは喪失の思いを突き刺す

避けようのない痛みを受ける

現実に耐えることができるだろうか


健やかに自立のできた大人は

時の流れとして受け止めるのか

絡みつくような孤独の影を


生きるってどうしようもない哀しみを

別離が付きまとう不安定を

生まれてからのカウントダウンを


喜びを得られたとしても

哀しみは癒せない

あいた穴を埋められない


そこにあるのは諦めなのか

喜びによる癒しであるのか

時間という忘却なのか


ぼくには哀しみの種が

押し付けられる不幸のようで

真っ先に逃げ出したくなる


だれもかれもが ある物語で

いつしか読み終わるものだからと

納得する間もなく哀しい


生きるって哀しみを伴うことだね

思い出せない記憶のかけら

欠落したまま生きて死ぬ


自分の哀しみを知ったとき

なにを恐れているのかを悟る

自分のしあわせを悟る


生きるとは折りあいをつけることだと

しあわせに折り合いをつけることだと

寂しい覚悟を拾いあげた




20170219

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