第7話 世の中ってお金で解決なのに、この人達は実力行使だよ!

「アスカさん、ライルさん、寝不足なのですか?」


ボクらの顔を見て、メシアさんが声をかけた。ボクとライルの目の下には隈が出来ており、一目で寝てないな~こいつらと言ったような事が感じられた。寝不足なのは、全て盗賊ライルの所為。断じて、ボクの所為じゃない。


「ライルの所為だよ、ボクが寝不足なのは…」


一言、溜め息混じりに告げると、メシアさんが無表情までの顔色を変えることなく、ボクらに向かってとんでもない言葉を吐いた。


「夜の営みを行いましたか?」


もちろん、ボクの瞳は点。ライルは妙にテレた顔をしながら、両手を振る。


「な、な、な、何言ってんだよ!オレたちはまだそこまではしてねぇーよ!」


「まだそこまでって、ライルとそんな事する気ないし!」


そんなボクらにはお構いなしに、メシアさんはお茶を啜る。話を振っておいて、野放し状態だ。反応することに馬鹿らしくなったボクは、メシアさんの座るテーブルの方へ行き、向かいに座った。ライルはボクの隣へ座る。あれ?そう言えばレイラさんがいない。


「メシアさん、レイラさんは?」


「私が起きた頃には、既にいなくなっていましたわ」


レイラさんと同じ部屋だったメシアさんに聞くと、そんな返事が返ってきた。お茶を啜りながら、メシアさんが話を続ける。


「お金を稼がないと…と、昨日の夜に寝言で言っていましたわ。後、美少年とか言う寝言も」


「お、お金?び、美少年?」


ど、どんな夢を見ていたんだろう。ボクはレイラさんの夢が気になった。


「レイラがいないんじゃ仕方ねぇーな、あいつは置いてってもう違う街へ行こうぜ」


「いや、普通は探しに行こうとかそういう気遣いがでるもんだよ」


「オレはアスカにしか、興味がない!」


「……断言するとこじゃないから…」


ボクが額に手を置き、溜め息を吐くと探し人であるレイラさんが現れた。とってもご機嫌のようで、ニコニコと笑顔を振り撒いている。


「おっはよー!みんな!」


「おはようございます」


ボクが挨拶を返すと、隣でライルが嫌そうな顔をしながら吐き捨てるように言葉を出した。


「んげ、帰って来やがった」


いつもなら、ライルがそんな事を言うとレイラさんの攻撃呪文が炸裂するんだけど、今日は違かった。


レイラさんがライルの方に微笑を向けた。


思わずライルが後退り。


そんなライルに声をかけるレイラさん。


「あら、今日も一段と色男じゃない」


「……アスカ!あれは、レイラの偽者だ!」


レイラさんの言葉を聞いた途端、ライルはボクの方に顔を向けながらレイラさんに指を向けて叫ぶように言った。た、確かに、いつものレイラさんならライルにあんな事を言わない…。もしかしたら本当に偽者?


「アスカ、あの偽者を剣で切りつけようぜ!そうしないとレイラが浮かばれねぇー!」


「き、切りつけるって…、偽者か本物かもわからないのに?!」


ボクの剣を掴んで、ライルが言った。そんなライルを見て、レイラさんがにっこり笑顔で言う。


「やぁ~ね~、私は本物よ?まったくお茶目なんだから、……燃えろ」


にっこりと笑っていたレイラさんだったが、攻撃魔法をライルに向けて放った。どうやらライルの言動に腹が立ったらしい。


あ、いつものレイラさんだ。本物だったんだ、良かった。


ライルも攻撃魔法を打たれ、本物のレイラさんと認識し、これ以上何も言わなくなった。


「それで、レイラさんは何処に行っていたんですか?」


ボクの言葉に、レイラさんが腰に手を当てて得意げに言った。


「コレよ、コレ!」


ボクらの目の前に、一枚の紙切れを見せる。

それを手に取って、ボクは読んだ。


「『洞窟に巣食、魔物を退治されよ。退治したものに褒美を』って、コレって」


「そう、魔物退治の御ふれよ。今から洞窟に行って、魔物退治よ!」


ぐっと拳を握って、レイラさんが光悦としたような顔をする。


「けど、よくこの御ふれを見つけてきましたね。本来は酒場とかで貰うものなのに」


ボクが言うと、レイラさんがにっこりと笑って言った。


「依頼は登録しないとって言われて頭にきたから、酒場に攻撃魔法をぶっぱなしてきたのよ。そしたらコレをくれたの」


…………へ?


い、今……おもいっきり聞いてはいけない事、聞いたような……。


しかし、メシアさんもライルさんも別段気にした風もなく、会話を続ける。


「宝箱とかあんのか?」


ライルの問いかけに、レイラさんが答える。


「もち、あるわよ!だからライルが必要なんじゃない!」


「そうですわね、罠も解除できますし。とても必要ですわ」


「おー!任せとけって」


ライルたちは、魔物退治そっちのけで宝箱の話ばかりをしている。


……本来の目的、忘れてない?


「さあ、これから洞窟へ出発よ!宝箱をとって、ついでに魔物退治よ!」


「……レイラさん、反対です。魔物退治がメインですから…」


なんてボクが言っても、レイラさんは聞く気なし。けど、これでちょっとは勇者らしくなったかな?とにかく、魔物退治を頑張ろう、うん。ボクは一人、燃えていた。

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