第4話 こわっ!この人攻撃呪文撒き散らしてるよ!魔法使いレイラ・ローレル

「もう一人はこちらにいます」


メシアさんが指を差した場所、そこは色とりどりの電飾がされた大きな看板。書かれていた文字は『カジノ』であった。


「カジノ…ですか?あの、ここって…」


「アスカ、カジノしんねーの?」


「うん、ボク、大きな街とかも初めてだからさ」


ボクは顔を看板の方に向ける。解らないボクに、ライルが教えてくれた。


「カジノっていえば、大人の遊び場っつーやつだよ」


「大人の遊びか…、具体的にはどーいう事すんの?」


ボクが聞くと、今度はメシアさんが答えてくれた。


「大人達が汚い手で手に入れたお金を、くだらないトランプ遊びやコインを食べてしまう恐ろしい機械につぎ込み、最終的には無一文なって堕落の一方を辿ると言うとても楽しい遊び場です」


「それ!全然楽しくないからっ!」


カジノのイメージが湧かないボクに、脱力させるようなライルの言葉が聞こえた。


「そうか、そんな遊び場だったのかよ…」


額を抑え、苦虫を潰したみたいな顔をした。


「っていうか、ライルも知らないのにボクに教えたの!?知ったかぶり!?」


そんなボクらにお構いなしのメシアさんは、歩いてカジノの中に入っていってしまった。


「メ、メシアさん!待って下さい!」


「この目に大人達の堕落ぶりが見れるのはここしかありませんわ。アスカさんも楽しみましょう」


「た、楽しめませんよ…そんなの……」


とりあえずボクらはカジノの中へと入って行った。それにしても、そんなにイメージが悪いところに、ボクの仲間はいるんだろうか?

ボクとしては居て欲しくないんだけど…。


中に入ると、外の看板よりもキラキラしたモノがいっぱいあった。


な、なんかすっごく賑やかなところ。


ボクが物珍しくキョロキョロとしていると、メシアさんが無表情な顔でボクに言う。


「無一文になった堕落者をお探しですか?」


「さ、探してないから…。ただ、ちょっと賑やかだなーって思いまして」


とボクが思っていると、ものすごい爆発音と女の人の罵声が聞こえた。そこに目線を向けると、真っ黒なローブを来た女の人が、お店の人の胸倉を掴んでいる。


「イカサマよ!イカサマ!!」


「お、お客様、言いがかりですぅっ」


「言いがかりなんかじゃないわよ!魔法をぶっぱなされたいの!?」


「す、すでにしているじゃありませんか~(泣)」


とても可愛らしい人が、見た目とは裏腹にハチャメチャな事を言って、定員さんに絡んでいた。


や、やっぱカジノって人を変えるんだな…。


「おっかねぇ~女」


「うん、そ、そうだね。あの人の仲間の人って大変そう」


ライルが女の人を見て眉間に皺を寄せながら言った。ボクはその言葉に頷き、女の人を見る。そこへ、メシアさんの言葉。


「あの人が最後の仲間ですわ」


メシアさんが女の人に指差しながら、言った。


「え?あの…」


「あの魔法をその辺りに放っている人が、私たちの仲間になる人です。水晶玉が教えてくれました」


メシアさんの手にある水晶玉が、確かにボンヤリと光っていた。


じゃ、じゃあ、あの一般市民に魔法をぶっぱなしているあの女の人が、ボクらの仲間っ!?


「そ、そんな!あんな怖い人、話し掛けただけでボク吹き飛ばされてしまいますよ!」


「大丈夫です、アスカさんなら出来ますわ」


「ねえ?!何を根拠にそんなこと言うわけ!?」


ボクが言っている横で、ライルがボクの肩を叩いて言った。


「アスカの可愛さであの女もイチコロだ!オレと同じにな!」


親指を立てて、得意げに言うライル。


それ、どんな説得力の仕方なの!?意味わかんないよ!!


「さあ、アスカさん。行ってきて下さい」


そう言ったメシアさんは、ボクの背中を物凄い力で押した。押されたボクは、転がるように魔法を放つ女の人の前に立った。遠くの方で、非難している一般市民の声が聞こえた。


「あの子、殺されちゃうわ!」


「もう、ダメだ。助けられない」


「可哀想に…」


聞こえてくる声。そんな声がボクの恐怖心を一層煽る。こ、怖い…、けど…話し掛けないと…。ボクは勇気を振り絞って、声をかけた。


「あ、あの!」


「あぁっ!?」


メンチをきられたって、こんな事を言うのかな?……こわっ!すっごい顔で睨んでる。………あれ?に、睨んでるけど、何か…、だんだん表情が……。


ボクが女の人を見つめていると、その女の人が悲鳴のような声を上げた。


「きゃ―――――――――――――――♪」


「へっ!?ええ!?」


ボクは突然、抱きしめられる。驚いて声を上げるボクに、ライルたちがやってきた。


「てめぇ!オレのアスカを離しやがれ!」


ボク、ライルのモノになったつもりはないんだけど…。女の人が、ボクに抱きついたままライルの方を見た。その途端、またもや悲鳴のような声。


「きゃぁ―――――――――――♪うっそ―――――♪」


今度はメシアさんを見て、同じような声を出した。


「すっごい!すっごいわ」


女の人はボクを離してから、ボクら三人の顔を交互に見ながら言った。


「この子!すっごく可愛い!美少年!」


「ボ、ボクですか?」


最初にボクの顔を見てから、そんな言葉を言った。頬を抑えながら、多少の興奮気味で。


次にライルの方に顔を向けた。


「そっちは美青年ね!」


「わかってるじゃねぇーか、けど、アスカは渡せねぇーぜ」


次に、女の人はメシアさんを見た。


「すっごい美人さん!なんでこんなにも美形達が揃ってるの~♪」


さっきの顔面強面ねーさんは何処へやら、笑顔をボクらに向けている。


「ねー、あなた達は仲間なの?」


「は、はい」


「やっぱり!私も入れて!」


女の人がボクの手を握りながら、とても興奮した面持ちで言った。ボクの横でライルが『手を離せ』なんて言っているが、無視をしている。というか、気づいてないかも。ライルの言葉に…。


「ねえ、ダメ?私仲間になりたいの!こんな美少年、美青年、美人が揃ったパーティーに入らなかったら、私絶対後悔するわ!仲間に為れなかったら、世界なんて軽く滅ぼせそうだもの!」


とても物騒な事を言う、この女の人は、レイラ・ローレルと言うらしい。


ボクの気持ちとしては、仲間にするのはいいか、悪いかで言ったら悪い方。けど、断ったなら本当に世界を滅ぼしかねなくて…。


「ボ、ボクらもあなたを仲間にしようとしていたんです」


ボクは世界のために、彼女を仲間に入れることにした。周りにいた人たちは、とってもホッとしたような顔。


「ふふ、やった!よろしくね!」


やっと全部の仲間が揃った瞬間であった。……最後の一人も、まともじゃなかったよ……。

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