第3話 爆破することなくない!?せめてたたもうよ!占い師メシア・リリス
「こうさ、一緒に歩いてるとデートみたいだよな」
頬を染めてハニかむように笑った男、ライルにボクは即、告げる。
「いや、全然。むしろ勝手について来るあんたは犯罪者だよ」
「恥ずかしがるなよ、オレ達は仲間兼恋人同士だろ?ア・ス・カ」
「いつから!?ねぇ!?いつから仲間になって恋人同士になったわけ!?」
ボクの話を聞かないライルは、妄想を口にしてさも現実のように言ってくる。
ボクは仲間にした覚えもないし、ましてや恋人同士になった覚えもない。
っていうか、なるつもりないからっ!
とりあえずライルを無視し、ボクは歩く。しかしライルはボクの後を、ずっとついてくる。ライルは本気で、ボクの仲間になるらしい。
「そこの方…」
ボクがスタスタ歩く中、誰かに声を掛けられた。
その声はとても綺麗な声。
キョロキョロと辺りを見回すと、また声が聞こえた。
「こっちです」
さっきと同じ、綺麗な声色。
今度は何処から声が出されたかは解った。大きな建物の隣に、ポツンと建つ小さなテントのようなもの。看板があって、そこには『占いの館』なんて書いてあった。
ボクはそのテントへと近寄って行く。
「えっと、ボクを呼んだんですか?」
「ええ、そうです」
テントから顔を出すのは、水色の髪を纏った綺麗な女性。人形のようにピクリとも表情を動かすなく、ボクに話し掛ける。
「まあ、綺麗なねーちゃんだけど、アスカの方が可愛いよな?」
「初対面で失礼すぎない!?っていうか、まだいたの!?」
ボクの隣にいつのまにかいたライルが、占い師さんを見て言った。占い師さんは表情をまったく変える事無く、淡々と話し出した。
「あなたは仲間を探しているのですね、とてつもなく大きな力に対抗するために」
「……え?わ、わかるんですか!?」
ボクが驚いて問うと、占い師さんは首を縦に動かし頷いた。
「この水晶玉が告げています…。あなたには後二人、仲間になります」
「後…二人……」
ボクは占い師の言葉をよーく脳内に響かせる。後二人か………って、………………ちょっと待って!?なんかこの言い方だと、もう誰か仲間になってるって事に聞こえない!?
っていうかさ、もしかしなくても、もしかして……。
ボクは隣にいるライルをチラッと見上げた。それから向き直って、ボクは占い師さんの顔を見つめた。しばらく見つめると、占い師さんはゆっくりと手を上げた。その手はライルを指差している。
「んだよ?」
頭に両手をのせながら、ライルは占い師に声をかけた。
占い師は唇を動かした。
「あなたの思っている通りです、彼は仲間の一人です」
「やっぱりか―――――――――っ!!」
ボクは地面に膝をつき、拳を握って腿を叩いた。見る人が見れば、ボクの背中には黒い影が落とされているだろう。そんなボクの背中をライルが叩く。顔を上げると、穏やかな笑みを浮かべたライルが言った。
「何をんなに落ち込んでんだ?アスカにそんな顔は似合わねーぜ?」
キランとばかりに笑って見えた歯が光ったようにも見えた。
ボクの顔色はすこぶる青い。
ボクの気の落としようは、すべてライルの所為だって気づいてる?気づいてないよね、そんな微笑してたらさ…。
何もかも諦めたボクは、身を削るような思いをしながら仕方なくライルを仲間として認めることとした。心の涙を流しながら、ボクは占い師さんに話し掛ける。
「後二人ってどんな人かわかりますか?」
「……ええ、少し待って下さい」
とにかく、残りの二人を探そう!そうすればライルと二人きりの旅にはならないし!そう言う思いを抱きながら、ボクは占い師さんの言葉を待った。
「……見えます、……一人は真っ黒……そして賑やかな場所に……コインが……見えますわ」
「真っ黒、賑やか…?コイン……」
占い師さんの言葉をなぞるように、ボクは呟いた。ボクの呟きに、占い師さんも頷く。そしてまた、水晶玉を見つめ出した。
「そしてもう一人は…………あら……」
水晶玉を見つめていた占い師さんの瞳が、ボク達の方へと向けられた。
「な、何かあったんですか?」
ボクが尋ねると、占い師さんは少しばかり間を置いてから、話し出した。
「どうやら、私も仲間の一人のようです」
「え…………えぇ!?」
テントの中で座っていた占い師さんが立ち上がり、水晶玉を持って外に出てくる。そしてボクとライルの前に立った。
「私の占いは百発百中です。私は占いに従い、あなた達の仲間になります」
そう言って、占い師さんはボク達の顔を見つめる。
え?え?こ、この人が二人の内の一人なの!?
驚きを隠せないボクに、占い師さんはお辞儀をしながら言った。
「私の名は、メシア・リリス。よろしくお願い致します、アスカさん、ライルさん」
ボ、ボク達、名前を教えたっけ…?そんな疑問にかられながら、ボクは手を恐る恐る上げてよろしく……と、メシアさんに言った。
「んで、メシアがオレらの仲間って事はわかったよ、でもよー、そのテントどうすんだ?このまま放置してくんのか?」
ライルがメシアさんのいたテントを指差しながら言った。メシアさんは無表情のまま何かの機械を取り出した。その機械には、出っ張った赤い突起物がついている。
「大丈夫です」
一言、メシアさんが言うと、手に持っていた機械についている赤いモノをカチっと押した。
どがーんっ!!!!!!!!!
その途端、メシアさんのテントが爆風を巻き起こし吹き飛んだ。メシアさんのスカートがヒラヒラと爆風に揺れる。
「な、な、な、何やってるんですか!?メシアさん!ばく、爆発っ!?」
「このまま放置し続けると、土地料が取られるので爆破した方が私にとって都合が良いのです」
「ねぇ!?平然と言ってのけるけど、明らかに器物破損だよ!?」
「まーまー、アスカ。本人がイイって言ってんだからいいじゃねぇーか。あの爆発、花火みたいで綺麗だったし」
ボクの肩を叩きながら、ライルがニコやかな笑みを浮かべた。
「そこ!笑うとこじゃないし!」
「喜んで頂けて光栄ですわ。ライルさん」
「今度はもっと大きいといいかもな、な!アスカ」
「肯定なんてボクしないよ!?君ら、その考え間違ってるから!」
爆風の名残が残る中、ボクはこんなんで本当に大丈夫なんだろうか?頭を抱えた。残り後一人の仲間がマトモであるよう願いながら、ボクはメシアさんとライルを仲間にした。
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