第2話 なんでイキナリ結婚話!?ボク男だし!盗賊ライル・リージニア
「うっわ~、おっきい街だなー」
目の前に広がる人や建物に、ボクは思わず感動した。生まれてこのかた、ボクはあの家から遠くへ出た事なかったから珍しいんだ。
「感動してる場合じゃなかった、早く仲間を探さないと」
ボクがこの街に来たのには理由がある。
とりあえず自己紹介するけど、ボクの名前はアスカ・ウェイレン。しがないきこりの息子だった。だったと言う事は、今は違うってことなんだ。
のほほん両親の所為で、ボクは勇者にさせられ、旅に出ろって強要された。
最初は断ったボクだけど、大切な何かを失ったらしい両親達が、泣きながらボクに旅に出ろって言うんだ。そんな両親を見ていたら、もう何か嫌になって、勇者になって旅に出る事にした。
家を出る間際に、ボクは父さん達から北にある『モントーレ』っていう街に行くように言われた。
『モントーレの街』はともかく大きな街で、ボクの仲間になってくれる人がいるだろうってことで、ボクはこの街に来たんだ。
「けどさ、こんな大きな街だと何処に行っていいかわからないよね?」
周りを見ると、チラチラとボクを見ている人がたくさんいる。
な、なんかボクの格好って可笑しいかな?田舎から出てきたってまるわかりってこと?うっわー、なんか恥ずかしくなってきた。はぁー…、これもみんなのほほん両親の所為だよっ!
居た堪れなくなったボクは、この場から早く立ち去ろうと思いサッサと歩き出した。
その時、肩を叩かれる。
振り向くと、オレンジ頭のカッコイイお兄さんが立っていた。女の子とかにすっごいモテそうだなー。こういう人って、とってもクールな感じだろうな。なんて事を考えたボクの肩をお兄さんに掴まれる。
がしっ
肩を掴まれ、ボクはお兄さんの顔を見つめた。真面目な顔つきで、お兄さんは言葉を発した。
「オレの名はライル・リージニア。好きだ、オレと結婚してくれ」
「…………………………はぁっ?!」
いやいや、幻聴かも知れない。
頭を振って、大きく深呼吸をしながらボクはお兄さん…ライルに聞いてみた。
「あの、ボクの聞き違いかも知れないんで一応聞いてみますけど、『好きだ、結婚してくれ』って言いました?多分、聞き間違いだとボクは思ってるんですけど」
しかし、ライルは首を横に振って再び言った。
「好きだ!オレと結婚してくれ!」
き、聞き間違いじゃなかったっ!?
ボクは首を横に振りまくって、いいえの返事をする。
「ボク、男です、結婚なんて出来ません」
「オレは男が好きなんだ、だから気にしない!」
「いやいや、ボクが気にしますって!それに男が好きなら、別にボクじゃなくても!」
「言っただろ!好きだ!一目ぼれだ!」
迫ってくるライルに、ボクは手を突っぱねて離してくれるように身体で表す。しかし、まったく離してくれる気配なし。
「む、無理です!ボク、旅の仲間を探して急いでるんです!離して下さい!!」
「じゃあ、オレが仲間になってやるって!」
「いえ、いいですから!丁重にお断りします!」
逃げようとしたボクだが、両手を掴まれ身動きできない。
「オレを仲間にした方が得だって!なんせオレ、職業が盗賊だし!」
「と、盗賊?」
ニッと得意げにライルが笑った。た、確かにパーティーを組むなら宝箱とか、扉の鍵を開けてくれる盗賊がいると便利だよね。それに罠とか外してくれたり命の危険とか極端に減るし……。
「オレを仲間にすれば得だって」
……命の危険は確かに少なくなるど………。ライルをチラッと見ると、頬を染めてボクを見つめる姿が目に入った。………命の危険より、貞操の危険が迫りそうだよっ!!
ボクはにっこりと笑って、
「いえ、違う人探します!」
ライルのお誘いを断った。ボクは先の危険より、今の危険を回避する事を選んだ。
しかし諦めないライル。逃げるボクを追い掛け回す。
「オレ、追っかけ続けるぜ!」
「あなたはボクのストーカーですか!?」
「何言ってんだよ、未来の旦那様だ!」
「それこそ何言ってるんですか!?」
四六時中ボクは、この盗賊の男、ライルに追っかけ回される事となった。ボクの仲間探しはどうなるんだろう……
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