第6話 獣人パイ

 久しぶりに、ミネルバロードに来ました。


 出入りが、自由自在とは行きませんが、ある程度行き来のコツを掴めたようです。

 ミネルバロードは、私が来るまで停止してるのか、よく解りませんが、何日空けても上手い具合に続きに入り込めます。


 こちらの身体、アバター?も順調に強くなっています。

 このアバターって、私が来るまでどうしてるのでしょう?自由に活動してるのでしょうか?



 この世界って、私が行くから現れるのか、この世界が在るから私が行けるのか、考えると不思議です。

 ラノベなんかでVRってMMOなんだよね、いつも誰かがプレイしてる、だからずっと世界は動いてる。


 でもこの世界は私しか入れない・・・。


 私が行かなくなったり、もし行けなくなったら、トムさんやサラさん、助けたミューはどうなっちゃうのでしょう、この世界でちゃんと生きて行くのでしょうか、それとも私が行くまで止まったままなんでしょうか・・・・・・考えても解んない!



 今日は、ミューとイドのダンジョンに行く予定です。

 準備が終り、今はミューの部屋になってる、お父さんの部屋をノックします。


「ミアおはよう、準備出来てるよ!」

「おはようミュー、サラさん所で、朝食にしよ!」

「うん、お腹減った!」

 ミューが、かなり砕けた話し方になって来ました。


 排泄の不要なこの身体、食事も不要なのかも知れませんが、美味しいものは食べたいです。

 朝の定番、ポンとほんのり甘いホットミルクで朝食を済ませ、サラさんに笑顔で見送られ、二人で南門に向かいます。

 門と言っても、門番は居なくて、南出口と言った方が相応しいかな?


 設定通り、ここからダンジョンまでは、モンスターは出ません。


 森の中、綺麗に整備された白い石畳の道を進みます。

 森からは、野鳥の鳴き声が聞こえてきます。

 茂みが、たまにがさつくのは、ウサギや小動物が逃げて行く音のようです。


「ミュー!これから行くダンジョンだけど、宝箱の中身を集めるんだからね!ダンジョンボスのイドは絶対相手にしない事!」

「うん!イドとは闘わず、宝箱を漁る!分かった」

「今の私達のLVじゃ、イドに瞬殺されるからね!」


 確認、打ち合わせ、折角したのに・・・・・・世の中思う通りに行かないものです。


 イドのダンジョン内から声が聞こえて来ます。

「キャー・・・もういや!!誰か・・・助けてぇ!!!」

 助けを求めるのは、女性か子供の声のようです。


 考える間も無く、二人は駆け出して居ました。


 ミューの速い事!

 私がやっと駆け付けた時には、既にイドに対し盛んに矢を連射して居る所でした。

 ミューは倒れて居る女の子を、庇うような位置で矢を射って居ます。

 イドはメラメラ燃える炎の塊のような化け物です。

 炎は熱く無く、逆に凍えるような、凍てつく炎です。


 瞬間あれ程闘わないように言っていた、イド目掛け突っ込みます、無意識の行動です。

 私は剣の攻撃が、通じるか解らないのに、斬りつけていました。

 アダンの実、投げた方が良かったでしょうか?咄嗟に出来たのが剣の攻撃だっただけです。


 無我夢中に剣を振るいます。

 攻撃受けても、痛くないはずが、痛い!!!

「ううっ!痛いよ!!!」

 うめきながら、いくら切っても、イドは倒せません。

 ミューの矢は連続でイドに当たっています。

 剣を持っている右手の感覚が無くなってきます、確りと両手で握り攻撃を続けます。

 疲れてイドより先に倒れそう!



 どれ程経ったのか分からない位、攻撃を受けつつ斬りつけました。

 気が付くとイドは宝箱に変わって居ました。

「フニィ~~疲れたよ~~」

 その場に倒れこんだ私に、ミューが丸薬を口に押し込んで来ます。


「早く飲み込んで!!」

「えっ?」

 150あったHPがわずか3になって居ます。

「危ない!死ぬ寸前!!!」


 丸薬が効いて、HPは220に上がりました。

「220??」


 私がイドを倒した形になったようで、LVが7上がり22になって居ました。

 ミューの援護があったお陰、ギリギリ討伐出来たみたい。

 私のモットーは、地道に不必要なLV上げで、悠々討伐なのです、こんなの二度としたく無いよ!!!



 宝箱には1000Gと貧相な杖が入って居ました。

 難易度のわりに、この程度の物。

 だから、イドを無視して、デスアイかモクを倒しながら、宝箱を漁る方がなんぼか儲けなのです。


 ミューは倒れて居る女の子に

「パイ!!確りして!!!」

 と話し掛けて居ます。

(パイ?女の子の名前、ミューは何で知ってるの??)

 よく観ると、ミューが抱き抱えている女の子には、トイプードルのような垂れた犬耳?が付いて居ます。


(獣人?ミューの知り合いかな?記憶が戻ったの?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る