第5話 獣人ミュー

 イベントらしき物、クリアーしたはずなのに、夢が覚めませんでした。



 先に起きていたミューが、もじもじしています。

「トイレなら、部屋を出て左にあるよ」

 ミューは慌てて走って行きました。

 ··········考えて見ると、私この世界で一度もトイレに行ってない?

 この身体どうなってるの?


 そう言えば、私鏡で一度も顔を見てないよ!

 て、言うか、鏡ってあるの?家には無い!

 気になり出すと、居ても立っても居られなくなり、騎士の剣を抜き平たい所に顔を映しました。

「えっーーーー!これ私じゃない」

 外人·····西洋人だよこの顔は?白人はだいたい老け顔で年齢分かりずらい、それにも関わらず、どう見ても18才に見えない!!子供だよこの顔!!


 日本人が見て、白人ではっきり子供って解る年齢って12~13才位だよね?

 個人差はもちろんあるけど、私がこの顔見て、子供って分かる位だもん、実年齢10才位?

 ミューに18才って言ったとき、ちょっと変な顔してたの、意味が解ったよ!

 18才には見えないよね、子供が大人ぶって年齢詐欺?位に思われたかな?

 ··········まっ、可愛いし、若いって良いか·····若いってか幼いけど。


 それより身体の方!!

 身長リアルでも低いけど、15才のミューよりも低いって今の状態、私の身体じゃ無いって言う事は、ゲームの中のアバターのようなもの、なのかな?この姿って·····

 痛感以外の4感はリアル過ぎる位働くのに··········


 に、しても·····戦闘中小石に足の小指ぶつけて「イタタ」って、痛みで戦闘不能になるのは困るけど、目に止まらない素早い攻撃を受け、HP削られてる事に気付かず、更に攻撃され死んじゃうってありそう··········

 まっ、痛く無いのは有り難いから良いか、それに中の人は18才女子大生だもん。

 嘘は··········ついて無いよ

 ダメだ!頭ん中グチャグチャ!!

 深呼吸!!!

 ··········アバター·····でもリアルで私、同じように強くなってるよね?



 まっ、考えて分からないもん、しょうがない今の状況、楽しいから良しとしよう!



「ミアさん·····服はどれを着たら良いの?」

 いつの間にかミューが帰って来てた。あせっ!!

「ミアで良いよ!私もミューって呼ぶから」

 もしかすると、ミューの方が年上かも知れないし。


 ミューの服、殆ど乾いてる。

「今日はミューの防具や武器を買いに行くから、ちょっと生乾きだけどミューが着てた服を着て」

「うん、わかった」


(ミューって物静で控え目だね、猫被ってるだけかも知れないけど、猫族だけに)


 ミューの服、短い上着とミニスカートがセットになってて、上下短いので当然お腹丸出し!

 上着は作務依みたいな作りで灰色っぽい生なりの着物、胸の所に赤い糸で刺繍が·····模様は、え~と·····カラクレナイじゃないカラジシ·····ちがう、昭和のどろぼうが背負ってる大風呂敷の模様·····何て言ったか·····まっ、それです。


 同じ模様の刺繍が付いたスカートは、尻尾穴が後に空いてる、尻尾と獣耳は町中では隠して欲しいので、穴が横に来るよう、くるっと回して着て貰います模様の向きが、ちょっとって感じになるけど其れなりに、こんなもんと思えば·····。

 帽子も被ってもらって。

 衣装を身に着けたミューは、うぅ·····可愛い顔してメリハリボディ、みょうに色っぽい!


「そうだ!ミューは武器何が良い?」

「んーと、弓矢なら少し使えるかな」

「弓矢ね、あまり良い物買えないと思うけど、お金無いから」

「弓矢無くても良いよ!蹴ったり殴ったり体術の方が得意だから」

「遠慮しないで、それにモンスター狩りだから武器は要るよ!」


「ミューはワームとかグラスドッグ知ってる?見た事ある?」

「知らない、見た事無い、モンスターなら、スライムとか、ゴブリン」

「だろうね、ミューはこのミネルバ大陸じゃなく、海の向こうの別の大陸から来たみたいだから」

(違う世界がくっついちゃったから、今の定番モンスターも出るんだ.......)

「ミアは別の大陸の事知ってるの?」


「大陸か大きな島があるって聞いた事があるの、でも誰も行くことは出来ないって言われてる」


(ミネルバロードの設定で、海は沖にしばらく進むと、障壁があり進めない、同じミネルバ大陸でも南だけで北には障壁があり通れない、完全攻略したら強制イベントエンディング、開放できてるか不明)


「ミア?」

「ごめんね、今はミューを生まれ故郷に連れて行ってあげれない」

「あっ!そんな事気にしないで、なんにも覚えて無いから」

「早く何か思い出せると良いね、ミューの大切な人が待ってるかも知れないし」

「··········」




 キョロキョロ珍しそうに辺りを見回すミューの手を引き、二人でトムさんの店に行きました。


「あれ?ミアちゃん、その子は?」

「トムさん、この娘はミュー旅の仲間になってもらったの」

「ミューの防具と弓矢を選んで貰えます?」

「·····そう?わかった!」

 トムさんもサラさんと一緒、もっと色々聞きたいようでしたが、私の事情を考慮して聞かずに居てくれる。


 防具は前面だけの革の胸当てに革のサンダル、弓を引くため指が使える指なしグローブ(ごめんね安物で)

 弓は短弓、ごつい作りで私では引く事ができなかった。


「へぇーこの弓が使えるの?じゃ、これはミューちゃんにあげる」

「トムさん、お金は支払うよ!」

「いやぁミアちゃん、実はこの弓使える人が居なくて、完全売れ残りなんだよ、だからミューちゃんに使ってもらう方が有り難い、それに店にあると手入れ面倒!」


 とか言いながら、トムさん私の懐具合知ってて助けてくれてる·····。

 防具全てで、1000Gにしてくれました。

 その上「前ミアちゃんが使ってたレイピア預かってるだろ?その代わりにこのナイフも付ける」って。

 大振りのナタのようなナイフです。

 トムさんには申し訳ないけど、もう笑顔で有り難うって受け取るしかないよ。



 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽



 ミューの実力見るため、弱いモンスター狩りから。

 西門をでます。

 身軽なミュー、私もLV上がってる、30分で砂丘に着きました。


(うぅ!弱くてもワームは相変わらず気持ち悪い)

「ミュー!」って声を掛ける前に、連発の矢が飛びます。

 ヒュン、ヒュン、ヒュンって超連射!凄い!!

 一瞬でワームが消えました。

「ミュー!凄い!!カッコいい!」

「ワームって言うの?弱いモンスターだったから」


 ワームが消えて、落ちた矢を拾い、矢尻の状態を確認しながらミューが言います。


「3本全部命中したんだよ!凄いよ!!」

「ん?·····狙ったから」

 狙ったから命中は当然?って事?

 狙って当てるのが難しいと思う、私の方が変なの?


 剣を抜き、フォローしようと思って構えてた私が、凄い間抜けな感じです。


 ミューは、最初の攻撃でワームなら一撃と感じたようで、次からワーム一匹に一本の矢で対処、あっと言う間に50匹も倒して居ました。

 私、剣を構えてただけ··········


 ミューのLVが8にHPは80になってる。

 ワームは相変わらず、1Gしか落とさない、50Gゲット!


 ワームの砂丘に来て、まだ2時間経って無い!

 昼まではまだ、時間がかなりあるので、北のグラスドッグ狩りに向かいます。


 歩きながら、グラスドッグの特徴をミューに説明します。

「首のまわりにトゲがいっぱい生えてる、トゲトゲ狂犬だよ」

(我ながら説明下手!)優しいミューは、「はい!トゲトゲ狂犬ね」と普通に返事してくれます。

 自己嫌悪に落ちながら、1時間位で到着!


 以前草刈りした場所で、グラスドッグが来るのを待ちます。

 殆ど待つこと無く、唸り声と共にグラスドッグが現れました。


 私が剣を抜くよりも早く矢が飛んで行きます。

 同時に隣のミューの姿が、ブレたと思って居る内に、グラスドッグの前にミューが?

 ミューはそのまま、グラスドッグにパーンチ!


 矢を射る、走る、殴るが、一挙動で終わりグラスドッグは宝箱に変わって居ました。

(殴らず、ナイフ使おうよ!)


「ミュー!凄過ぎ!!!」

(獣人のLVって、人のLVと比べちゃダメだね、基本の身体能力が全然違う!)

 其からは、宝箱開けるのが忙しいこと!!

 私もグラスドッグなら、一刀両断出来るようになってる。


 結局忙しくて、二人で何頭倒したのか分からない。

 私もミューもLV15 HP150になって居ました。


 アダンの実それに丸薬、これだけリアルなのに、ミネルバロードのルール、99個以上持てない?

 私が持てない残りを、ミューに持って貰いました、ミューは99個限定じゃ無く、何個でも持てるようです。

 ミューは、ミネルバロードの本来の住人じゃ無いからルールに縛られる事が無いようです。


「ある意味チートだね」


「ん?ミア何?」

「ミューが凄いって事!」

「·····そう?」

「現金も300G以上ゲット出来たし、余分な丸薬とか売りたいし、帰る?」

「全然疲れて無いから、もっと闘えるよ!」

「昼食抜きだったからお腹空いてるでしょ?」

 ミューのお腹がグーって返事しました。


(御免ね、お金無くてお弁当買えなかったの)


「今日は豪華な夕食食べよ!」

「うん!!」

 犬族じゃ無いから、尻尾ブンブンは無いけど、凄く嬉しそうに答がかえって来ました。




 町に帰り、薬屋に丸薬とアダンの実、殆ど売りました。

 買い取り値段は、アダンの実10G丸薬20G(売値はアダンの実15G丸薬30G)で、全部で5000G以上ゲットしました。


 サラさんの宿屋に行きます。

 魚フライ、煮魚焼き魚、魚のあらスープ、ミューの希望で、お魚三昧の夕食でした。

 ミューの嬉しそうに食べる様子で満足です、でもお肉食べたかった。


 家に帰り、二人で身体を洗いっこして、また一緒に寝ました。

 私は、自分で思っていた以上に、疲れていたようで、瞬間寝ていて、その瞬間講義の状態に戻りました。

 講義の進行から、殆ど時間が経って居ないようです。

(こんな変なタイミングの転移は、ミューを保護して仲間にするための、強制転移だったのかな?)



 もう夢とか、曖昧な事じゃ無くて、203号室の変人のVR装置、あれマジモンだよ!!

 どうなってるか解んないけど、私ってVR体験してる!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る