第3話 約束

「大樹くん、約束は覚えてくれてるよね?」

「うん、もちろん」

まだ小さかった・・・

その時は、すぐに忘れてしまうと思っていた。


だが、両親からの「受けた恩は忘れるな」

その言葉通り、パピの事は忘れなかった。

正確には、パピの優しさを忘れなかった。


でも、「与えた恩は忘れろ」とも言われた。

なので、パピは忘れてると思ったいた。


でも、こうして今、僕の眼の前にいる。

パピも、僕の事を覚えていてくれた事を嬉しく思う。

あの時の約束を、守ってもらうために・・・


3歳の頃、パピと別れ際に約束した。

「大樹くん、これは仮だからね」

「かり?なにそれ?」

「んーとね。君が大きくなったら、私の世界に来て、お礼をしてほしいの」

「おれい?今じゃだめなの?」

「うん。今の君は、まだ小さいからね」

「で、いつ?」

「そうね・・・18歳。君が18歳になったら迎えに行くから」

「ほんと?約束だよ」

「うん。約束」

パピと指切りを交わした。


そして、その18歳になった。

その時は、他愛のない事だと思っていたが、

大人にならないと出来ない事だと、かなり限られる。


「受けた恩は忘れるな」

そう言われて、育った。

両親も、おそらくは知っていたのだろう。

パピの事を、よく夫婦で話しているのを聞いた。


「大樹くん、約束言ってみて」

パピの口から、その言葉が出るのは、想定内。

僕を試していると、すぐにわかった。


「お嫁にもらって」だよね。

「うん、正解」


でも、疑問が残る。

結婚自体は構わない。


ただ、人間と妖精が結婚出来るのか?

出来たとして、どこで暮らす?

僕がパピの世界で、馴染めるか?

パピは、人間界で不自由しないか?


もちろん、協力は惜しまないが、それぞれに限界がある。


「僕の、両親は知ってるんだよね?その事」

「うん、もちろん」

パピには、迷いはないようだ・・・


とりあえず、両親の帰宅を待つ。




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