第4話 十一から十五
【十一】
閉館した映画館で人知れず、映写機が動き出すことがある。
上映されるフィルムのタイトルは「夢」。
いつも違う人物の人生を追った記録映画だが、突然に終わってしまう。
決まって主人公が不慮の死に見舞われるのだ。
【茂木怪異録 映写室の怪 より】
【十二】
全国をまわり怪異を集めていると、妙に怪異の多い地域というのがあることに気づく。
そこには必ず、「カミユイ」がいたのだ。
落ちぶれたカミの類を怪異へと変じさせている「何か」。
怪異なのか人なのかカミなのかもわからぬそれを、私は長年追い続けている。
【茂木怪異録 カミユイ より】
【十三】
ある民家で、飼い犬が自らの小屋の中を見つめて唸り声を上げていた。
さてはハクビシンか何かが入り込んだな、と 箒の先を入り口から差し入れると、突然何かにものすごい力で引っ張られ、長い箒は小さな犬小屋の中に消えた。
家主は怯える犬を抱えて人を呼び、小屋を取り壊したが、箒は見つからなかった。
【茂木怪異録 犬小屋の怪 より】
【十四】
これはとある山あいの部落に伝わる伝承で、嘘ばかり吐く者は雀に舌を切られるのだと言う。
他にもこの部落には妙な伝承が多くあり、事実として信じられている。
しかしそれらを否定する村人もいると言うので、私は彼らの家を訪ねたが、誰も皆口が固く、とうとう何も喋ってはもらえなかった。
【茂木怪異録 舌切り雀 より】
【十五】
欧州のとある古い町を訪れた時、地図に無い小道に迷い込んだ。
道を失った私の前に、長く薄い襟巻きで顔を覆った紳士がどこからともなく現れた。
彼はこの辺りの道に明るいようで、私を正しい道へ戻してくれた。
礼を言って振り向いた私は石壁に鼻を擦り、来た道が無くなっていることに気づいた。
【茂木怪異録 煉瓦道の紳士 より】
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