はじめて作った炒飯

口に運んだ米は食えたものではなかった。米と具材を炒めただけで、こうもゲテモノに成り下がるものだろうか。スプーンを咥えたまま首を捻る自分の向かいで、慣れないことはするもんじゃないね、ときみが笑いながら食べていた。

きみが焦げた米を口に運ぶ度に髪がさらさらと落ちていく。耳にかけても余るもんだから、自分は手を伸ばして、


「なに?」

きみが顔を上げた。昼間、人の少ない映画館で見たものとは違い、純粋に疑問を持っている表情であった。

自分は伸ばした手を不自然に引っ込めた。その動作にきみはまた笑った。


地球を飛び出し、宇宙を漂い、月を歩く。少ない重力で自由に飛び跳ねる映像に自分は感化されたのだろう。隣に座るきみの髪に手を伸ばして――きみの機嫌を損ねてしまった。絵に描いたような眉間のシワの深さが、鑑賞中の邪魔がどれだけ不快だったかを物語っていた。


完全に自分が悪いのはわかっているので、許してもらおうと奮闘した結果がこれだ。

慣れないことはするもんじゃないな。痛感したというやつか。


米を掬うとやけに水っぽい音がした。それでもきみはにこにこと、焦げた米と塩辛い具材を頬張るので、ご機嫌取りは成功ということで良いだろうか。


■■■

【】さんはチャーハンを作るのに失敗した日、月世界旅行の上映をする映画館できみの髪に触れると嫌そうな顔をされた話をしてください。

#さみしいなにかをかく

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