第4話 同志発見!
それからというものの、コンラッドはわたしに猛烈アタックをするようになった。休憩時間、昼休み、放課後、わたしを訪ねてくるのだ。もちろんわたしは拒否するけど、周りが何故か乗り気でわたしとコンラッドを引き合わせようとするのだ。迷惑な話である。
ま、別クラスなのが救いだ。授業中は私の安寧である。
実家にもなんかコンラッドとの婚約の話が来たが、わたしが全力で拒否したからその話は無しになった。
素直に浮気性の男は嫌だ、と言ったら両親は、ですよねーっていう感じであっさりと納得してくれたのだ。話の分かる両親で良かったぜ。
「はあああああああああああああああ……もうなんなの、アイツ」
昼休み。奴が来る前に教室から出たわたしは、馬舎の近くを歩きながら頂垂れていた。ここは乗馬する以外生徒は近寄らないのだ。
ほんと、しつこい。噂だと来るもの拒まず、去るもの追わずな奴がどうして断り続ける私を追う。
それだけ本気なのよ、と周りが言うがそんなことないね。前世の経験が言っているから間違いない。
前世の彼氏はしつこかったが、すぐに浮気したぞ? 今は君だけだよという言葉は、すぐに消えて別の女をつまみ食いするぞ。絶対にだ。
「あれだ。もう婚約者を作るしかない」
婚約者でも作れば、さすがに奴も諦めるだろう。人妻には手を出していないみたいだし。
さて、どんな人に話を持ちかけよう。話が分かってなおかつ協力してくれる人がベストだ。そして結婚してもいいや、と思える人。
前世が前世だったので、恋愛だとか結婚とかに夢は見ていない。最初は好きな人、とかないない。もうどうでもいい。趣味は許してね! っていうのが本音である。
一番大事なのは浮気しない人。これは必須だ。子供を作るのが妻の役目だけど、そこは緩いところがいいな。長男じゃない人がベスト。
でも中々いないんだよなぁ。誰かいるかなぁ。
考えていると、馬舎から男子生徒が見えてきた。ズボンの色からして、わたしと同学年か。
銀髪の少しツンツン頭で、横顔から見てもイケメンということが分かる。
タイプはそうだな……悪戯少年がクール系に育つ途中って感じ? 分かりづらくてスマンね。素直じゃないクールでツンデレな受け? でも感情は表に出ている的な。うむ。ああいう受けには、やはり見た目は優しげだけど、捻くれ鬼畜眼鏡、ただし受けを溺愛している大人攻めがいいな。デュフフフ。
その子はふいに立ち止まって、空を見上げた。こちらには気付いていない模様。
「……生きてと願うこと自体、赦されないと分かってはいるけれど~」
「!」
彼が紡いだ歌に戦慄した。
そ、それは! わたしが前世で追っていたアニメ『僕は贖罪の鐘を鳴らし君に伝えよう』、略して贖鐘のオープニングテーマ!
大罪を背負った青年と、青年の大罪の末に生まれた少年の葛藤と芽生える愛情を越えた何かを描いた物語!
オープニングは青年視点、エンディングは少年視点という我らにとって、聴く度に悶え死ぬという神曲!
初めは自分の大罪の末生まれた少年を毛嫌いした青年が、少年の真っ直ぐな心に触れて変わっていって、少年も最初は青年のことが嫌いだったけど青年の過去を知って、青年の本音を聞いてその心に寄り添おうとするの。少年が暴走しそうになったら青年が厳しく叱って、少年も青年が暴走にしそうになったら聖母のように優しく青年を包み込むんだ。
わたしの大好物の運命系ホモが、まさしくこれだ。
ちなみに青年の名前はシベルツ、少年の名前はルカ。わたしはシベルカにハマっていた。シベルカは底なし沼だ。這い上がるに時間がかかる沼だ。
うわあああ懐かしいよおおおお!
ん? ちょっと待って。ま、まさかこの子は!
「き、君が進むその道の先を~最期まで見届けたいんだ!」
続きを歌うと、その子が瞠目して振り返った。
見つめ合うこと数秒。その子が口を開く。
「絡みつく影を蹴り飛ばしても、闇を背負うとする、この姿を」
続きを歌ってくれた。これは……試されている!
「君に見せたくないと思うのは、きっと君が眩しく見えるから~!」
「どうして~全ての温度を! 君は振り払って往くんだろう!」
「その理由を分かっていても! 僕は君に投げかけられない!」
「それでーも僕に寄せ合ってほしいと! 願うのは我が儘なのだろう!」
「君は笑うかもしれないけど! 僕は君に伝えたいんだ!」
「ここにここに帰ってきてー!」
歌ったぜ……アニメバージョン歌いきったぜ。
少し沈黙。相手が両手をかざした。わたしはその手にハイタッチした。
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