第40話 離婚

「Naoのプラン、面白いなぁ。。。これまでのNaoとはアプローチが違う。2ヶ月間か。。。誰がいいだろう。田所さんとウマがあって、平野取締役の眼鏡に適う人財。女性は敵さんに思わぬ揚げ足を取られる可能性があるから、避けた方がいいな。でも、Nicoleは西島テックがClosingだから、内部で助けてもらおう。行くのは、Shinがいいかもしれないけど、やっとRITSから戻って来られるのに、外から外の横転はさせられない。

、、、Rogerか!彼ならいけるね、きっと。

さて、どんな立場で行ってもらう?海外採用の現地役員含みで?日本で研修を兼ねてOJT?だよな。それで、田所さんに付いて動く。人事には、部門内部改革のための外部監査の派遣で内密行動の許可を得る。平野取締役は前職で人事管掌だったっていうのは効くなぁ。どこの採用かは平野派の方がいる拠点がどこにあるかだな。

少ないが、フィーは貰えるだろうし、ほぼそのまま我々への幹事以降の材料に使える。こんな役回りであれば、Bidにしてうちを選ぶ必要もない。」

「OK。まず、JohnとKotの合意をもらおう。そしたら、簡単な英文メモを作ってくれる?RoyのGo signもらおう。絵の中に、Incomeのイメージがいるね。ジャパンとグローバル分。作文してみてくれる?その内容は上にも横にも出て行くから、簡潔にかつ注意してな。Enjoy!」

ブレインストーミングの予定で設定した30分間ミーティングで、萱場自動車の懐に入るための絵を描くところまでできた。4人部屋のRoom ”Paris”から出てきたら、浩一がリフレッシュルームからコーヒーの入った紙コップを持って出てきた。


「おぅ、Jake、、、。」

奈緒は、そのままオフィススペースへと入っていった。

「今夜、時間、取れないかなぁ。ちょっと相談に乗って欲しい問題が出て来てさぁ。」

「OK。8時頃には出られるけど、Kouの予定は?」

「OK。折り入っての相談なんだ。宜しく頼む。」

俊樹の頭の中では、既に香穂の顔が浮かび、不倫仲間の自分への相談だと合点していた。


オフィスルームに戻ると、樹が寄ってきた。

「プロジェクト群がいろいろ進捗してるから、一回Kouと3人でプロジェクトとリソースの整理をしたいんだけど。合わせて予算計画も。」

「ちょうど、こっちもご相談があるんで、明日のどこかを45分間Bookingさせてもらいますよ。」

「OK。」

俊樹はデスクに向かう。樹と入れ違いで、外出から戻った洋平と望が嬉しそうに近寄ってきた。

「Jake。西島テックさんの件、プログラムと見積りとを持ってプレゼンしてきました。宿題なしで、了解をもらいました。再来週のグローバルボードミーティングでゴーサインをもらう運びです。前打ち合わせの通り、日本国内は、inhouse agentが煩いことになるので、フェイズ1では触れていません。とりあえずのIncomeは日本で2,000万円と海外合算で800万円程度です。」

「そっか!お疲れ!!せっかくだから、樹には2人から報告しておいで。上にもしっかり上げてもらおうな。

っで、すごいタイミングなんだけどさぁ。おもちゃがなくなって手持ち無沙汰になるだろ?2日間ほどリフレッシュっていうか、残務処理したらコントロールして欲しいニュープロジェクトが舞い込んでるんだよ。俺がPMで、Naoがブレイン。そこにお二人の力も必要っていうプロジェクト。」

そう言いながら、PCで空きミーティングルームを抑えた。

「今、15分ほど付き合ってくれるかなぁ。」

そういうと、デスク上の関連資料をもう一度手に持ち、奈緒を手招きし、洋平と望はデスクにバッグを下ろし、4人でオフィススペースを出て行った。



夜8時を数分過ぎた。俊樹は浩一と顔を見合わせてPCを落とし、デスク上の書類を丁寧に幾つかのファイルに戻して引き出しにしまい施錠した。

「お先に。」

「俺も、お先。」

純平が声をかける。

「すぐに追いかけます!」

「純平。今日は2人で野暮用だ。悪いなぁ。」

そう言い残して俊樹と浩一はオフィスルームを出た。タクシーを拾い、浩一が有楽町方面へと向かうようにドライバーに指示する。車中では、仕事の話に終始した。

東京寄りの線路沿いでタクシーを降り、料理屋の集まったビルのホールに入り、4階を目指した。フロアに降り立つと、案内係に予約を告げ、煙で少し白んでいる明るい店内を通り抜けて、カウンターの一番奥に通された。2人は座る前にスーツの上着を脱ぎ、カウンターの下にある籠に入れながら、生ビールを2つオーダーする。それから、少し仕事の話をした。

「ところで。どうした?」

「あぁ、相談の件ねぇ。」

浩一の顔が曇っていくのが分かる。

「実は、不倫してる。」

「、、、知ってる。」

「違うんだって。」

「ん?他にもいるってこと?」

「違う。奥さん。」

「それ、浮気じゃないから。ん?」

「浮気してんのは、俺の奥さん。」

「はぁ。。。」

「うち、奥さんの実家近いでしょ。っで、奥さんも旅行会社で普通には営業してるし。ところが、会社で部長といろいろあるっていうのが分かっちゃってさ。」

「なんで分かった?」

「池袋でその手のホテルから2人で出てくるのを偶然見たのが、はじまり。どうするか迷ってたんだけど、こないだの俺の誕生日にもあったらしい。他の人いろいろと。会社の会議室でお楽しみのところを、部下に現行犯で挙げられたんだそうだ。ここんとこ、奥さんは家にいるんだよ。おかしいなぁと思ったら、謹慎食らってるらしい。俺にはそう言わないんだが、裏が取れた。」

「奥さん、やるね。大胆だな。んで?俺に話したのは?聞いて欲しいのか、相談したいのか。」

「聞いて欲しいのが9、相談が1。」

「ってことは、ほぼほぼどうするかは決めていて、背中を押して欲しいってことだな?」

浩一は、ビールグラスを口に運びながら頷いだ。

「じゃあ、俺から先に話さんほうがいいな。混乱させると宜しくない。それで?」

「あぁ。でも、お前ならどうする?」

「おいおい、弱気じゃないか。今、冷静か?それとも、まだ動揺してる?」

「たぶん、ほぼ冷静に戻った。」

「っで?出してる結論は、冷静に考えて、客観視してみてどうよ?2年後の自分から見てどうよ?」

「あぁ。。。」

浩一は、右手でグラスを持って、中身を全て口の中に流し込み、ハァッと息を吐いてから返した。

「多分、いいんだと思うんだよ、これが。」

「よしっ。俺も聞く準備がてきたし。んで?どうすんだ?」

「知ってる素振りは見せるが、触れない。今まで通りの夫婦関係と香穂との関係のままでいる。」

「なるほど。二者択一だけど、香穂ちゃんが今のスタンスだから、俺も同感だ。部長にも家庭はあるのか?」

「あぁ。多分別れることはなさそうだ。」

「それなら、いいんじゃないのか?奥さんとの関係は保てそうか?もしも別れる気があるのなら、子供が小さいうちがいい。Kouが引き取るにしろ、奥さんについて行くにしろ。」

「そうだな。だが、そこが整理の付いてないところなんだよ。」

「俺なら、香穂ちゃんに相談する。新たな人生を開いていくチャンスでもあるんだから。人生、80年、90年で考えたら、ステージはまだまだ無限だしなぁ。

俺なら、選択肢の中には、香穂ちゃんと子供と3人の新しい人生もあるなぁ。子供は手放しても、きっと一生ついて回るから、やっぱり手元に置きたい。自分のこれからの人生を誰と歩いて行きたいか。香穂ちゃん、子供、奥さん。全員なら、今のまま、自分の将来像に奥さんが見えないなら、違う道を模索。

ただ、Kouも香穂がいるんだから、奥さんとやってることはevenだし、Kouの方が先だし、それが原因って言われたら、やっぱり弱いよな。

っていうことで、そのあたりの選択肢を掲げながら、香穂ちゃんと相談するね。」

「っだな!サンキュー。

すいません!生ビール2つ。」

「Kou。お前なら大丈夫だから。」


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