黒い病院

病気で倒れ、救急車で病院に搬送された。

俺は悪い夢を見ているのだろうか。奇妙な光景だった。


医者や看護師が、まるで葬式のような、真っ黒な服を着ている。

服装以外はまったくもって病院の雰囲気だ。

信頼できそうな医者だが、本当に俺は助かるのだろうか。



……もしもこれが、長い夢や死後の世界でなければ、俺はどうやら助かったようだ。

確かに俺は、黒服の病院にいて、恐らく数日入院しているのだろう。


今日は医者と話せるらしい。


「山田さん、調子はどうですか。痛いところ、苦しいところなどはありますか?」

「よくなってきたようです。ありがとうございます」

「経過はよさそうですね」

「ところで、みなさん、どうして黒い服を着ておられるのですか?」

「白はきれい、清潔、よい。黒は汚い、不潔、悪い。そういった差別的な先入観を我々はよく持ちます。医者や看護師が白い服を着るのは、白人至上主義の現れです。そういったことは、やめなければならない。医者や看護師が黒い服を着ていたら、何が問題ですか? 何も問題はありません」

「いや、その、葬式みたいだなと」

「黒人を差別する文化が根強く残っているのです。私は、葬儀には白い服で、結婚式には黒い服で行きます。それが正しいことだと思うから」

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クソ短編集 @dempacat

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