毒水を飲む老人
老人は嘆く。近隣にできた化学工場のせいで、昔から使っていた井戸の水に毒が混ざったと。
きちんと水質検査を行い、工場が原因と見られる物質が検出されていることを確かめ、工場にも行政にも言っているが、まともに取り合わない、と。
抗議デモもインターネットでの抗議活動もしているが、効果が上がらない、と。
老人は、恐らく毒のせいで、日に日に顔色が悪くなっていく。
私は老人に言う。
「抗議活動を続けるのは結構ですが、井戸の水を飲むのをやめてはいかがですか。このままでは、本当に死んでしまいますよ」
老人は言う。
「井戸の水が飲めなくなったのは、自分のせいではなく、化学工場のせいだ。なぜ私が井戸の水を飲むのをやめなければならないのか。なぜ被害者が退場しなければならないのか。やめるべきは、化学工場であって、私ではない」
老人は、長くは持たないだろう。
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