クソ短編集

ウラニウム・ペイ

「ウラニウム・ペイで支払います」

「すみません、うち、対応してないんですよね」

最近、ウラニウム・ペイで支払いたいという人がたまに来るようになった。聞いたことがないが、噂では、宇宙人が使う決済システムらしい。

ウラニウム・ペイの営業がやってきた。

「ウラニウム・ペイは銀河系での普及率は99%以上。知的生命体の住む惑星では、大抵、ウラニウム・ペイが使えて便利。地球ではまだ普及率が高くありませんが、今なら初期導入費用キャンペーン中。ご存知の通り、最近は宇宙から地球にやってくる方が増えてきています。ウラニウム・ペイに対応すれば、宇宙からのインバウンドが見込めますよ」

「その、ウラニウム・ペイって、なんなんでしょう?」

「エネルギーによる支払システムです。エネルギーは受け渡しが容易で消えることのない普遍的な価値です。結晶に閉じ込めたウラニウムに、エネルギーテレポーテーションを行うことで、価値を交換します」

「えっと、私達は、エネルギーじゃなくて日本円で支払ってもらわないと困るんですが……」

「ご心配なく。3%の手数料をお支払いいただければ、いつでもエネルギーは日本円で銀行口座にお振込できます」

「じゃないと誰も導入したくないわなぁ……」

「初期導入費用ですが、通常は3,980エナジー、日本円で約108万6,000円が今なら無料。さらに、ウラニウム閉じ込め結晶とテレポーテーション装置のレンタル料、月額600エナジーが今なら1年間無料、そして決済手数料2%も1年間無料！　こんなにお得なチャンスは今だけです」

「え、1年経ったら、月額15万円と決済手数料2%、さらに日本円にするのに3%の手数料が必要って言ってます? それ、うちにメリットあるの?」

「今や、ウラニウム・ペイは常識です。現金やクレジットカードなんて時代遅れです。他の惑星と同じように、誰もがウラニウム・ペイを使う日が、近いうちに必ず地球にもやってきます」

「うちが導入するのは、そうなってからでいいかな。なるとは思えないけれど」

本当にそんな日はやってくるだろうか。ウラニウム・ペイの導入を断った後も、少し考えていた。

たまに導入している店は見かけるようになったが、周りに使っている人は誰もいない。

そして、忙しい日々を過ごしているうちに、そんなもののことはすっかり忘れていたが。

ある日、「地球駐在宇宙人が語る、地球のここがダメ」というブログ記事を見つけた。

読んでみると、その中のひとつに「ウラニウム・ペイに非対応。未だに現金やクレジットカードが主流で不便」というのがあった。

大きなお世話だ。誰も不便だと思っていない。そんなものは、どこの星にあるのかも分からない会社に売上の数%を渡したい人だけが導入すればいい。