94話〜幻覚

 ここはスカイネーブルから南東に位置する洞窟。


 レオルドとセレネアと兵士達はレマイスの命でここに訪れていた。


 洞窟と言っても人の手が加えられ所々に微かにランプが点灯し薄暗くはあったが歩くのにはそれほど難はなかった。


 レオルド達は洞窟の至るところを調べていた。


「レオルド。今の所はこれといって何もないね。」


「セレネア。確かに、何も無いですね。もう少し奥に行ってみましょうか。」


 レオルド達は奥へと入って行った。


 レオルド達は奥に進むと空洞があり、中は至る所に人の手が加えられ、そこで何かの研究をしていた痕跡があり、色々な研究道具や本などが置かれていた。


「これは……ここで、何かの研究をしていたのでしょうか。」


 レオルドは辺りを調べ始めた。


「確かに、これは……こんな所で、いったいどんな研究をしていたというの?」


 セレネアも辺りを調べ始めた。


 兵士達はレオルド達を護衛する為、空洞の中で待機していた。


 “さて、始めるとするか。”


 ゲリュウデスはそれを確認するとレオルド達に幻覚を見せた。


(ネリウス様なのか。ここで研究をしていた者とは……しかし、このタイミングで、何故今頃になり神がレマイス様にお告げを……。)


 そう思っているとゲリュウデスはレオルド達の前に幻覚のゴブリンの群れを出現させた。


「これはいったい、どういうことだ!?いつの間にこんな数のゴブリンが現れたと……。」


「レオルド……これって、かなり不味いのでは。」


「確かに、不味いですね。ゴブリン達を倒し、ここを出なければ……。」


 そう思っているとゴブリン達はレオルド達を襲おうとしていた。


 そこにネリウスの配下の者達が来た。


『レオルドとセレネアが、この異変の元凶をもたらしている可能性がある。証拠を隠される前に阻止しろ!』


 と言われネリウスの配下の者達はレオルド達の後を追って洞窟に来ていたのだ。


「レオルドにセレネアは、何故身構えている?兵士達も何かを攻撃しようとしている!これはいったい……。」



 ……この男はハウゼル=ラマラといい、ネリウスの配下の1人だが、レオルドとは同期でその性格も良く知る者だった。



 ネリウスの配下の者達には幻覚が見えておらずレオルド達が何をしているか分からなかった。


 ネリウスの配下の者達はレオルド達の様子を少し見る事にした。


 レオルドはゴブリン達を警戒しながら、ここを出る方法は無いかと考えていた。


 セレネアは何故こんな所にゴブリンの群れが現れたのか考えていた。


 兵士達も今までこれほどのゴブリンの群れを見た事がなく、何故ここにこれほどの数の群れがいるのかが不思議だった。


(どうしたら、いいのでしょう。このままでは……それに、これほどのゴブリンが、ここに住んでいたとは考えにくいのですが……だとすれば、やはりこれはネリウス様が私を始末する為と考えた方が……でも、何故セレネアまでもが……。)


 そう思っているとゴブリン達はレオルド達に襲いかかった。


 レオルドは襲いくるゴブリン達を杖で薙ぎ払いながら、


(このままでは、何か打開策はないものか……。)


 そう思いながらレオルドは心配になりセレネアの方を見た。


 セレネアも必死でゴブリンを相手に戦っていた。


 しかし……急にセレネアの様子がおかしくなりレオルドを睨みつけていた。


 そしてセレネアは杖を翳し、


 《ブフェーラ ディ ネーヴェ‼︎》


 と呪文を唱えると吹雪がレオルドを襲った。


「クッ、セレネア!何故私を……これはいったい。」


 するとレオルドは吹雪に襲われ、ダメージをおったが、咄嗟に防御の魔法を自分にかけかすり傷で済んだ。


 セレネアはレオルドをまた襲おうとしていた。


 すると、微かな声でレオルドの頭の中にブルーノアが話しかけてきた。


 “レオルド。これはゲリュウデスが見せている幻覚です。恐らく、セレネアは幻覚を見せられ、貴方を敵だと思い込み襲ってきたのでしょう。この幻覚を解かなければ大変な事になるかもしれません。私は、ゲリュウデスに見つかる訳にはいきませんので、後はお願いしますね。”


 レオルドはブルーノアの声が聞こえなくなったのを確認すると、どう切り抜けるか考えた。


(どうする?このままでは、セレネアも私も……とりあえずは私だけでも、この幻覚をどうにかしなくては。)


 そう思いながらバックの中から、自分が作った魔法が封印されたカードを取り出し、幻覚を解く魔法を探した。


 そして、レオルドは幻覚を解くカードを見つけると、すかさず術式が書かれている方を自分に向け、


 《プリフィカツィオーネ‼︎》


 と呪文を唱えると自分にかけられていた幻覚が解かれた。


 そして、レオルドは幻覚が解け辺りを見渡して見るとそこにはゴブリンの群れはいなかった。


(これはいったい!あれは神ゲリュウデスが見せていた幻覚……そうなると、早くセレネアや兵士達の幻覚も解かねばなりませんね。それにネリウス様の配下の賢者達までもがここに……。)


 そう思いレオルドはセレネア達の幻覚を解く為、魔法のカードを探した。


 レオルドが探している間に、セレネアは幻覚を見せられ兵士達に攻撃を仕掛けていた。


 それを見たハウゼル以外のネリウスの配下の者達は、幻覚を見せられている事を知らずセレネアを攻撃しようとしていた。


 レオルドはそれを見てネリウスの配下の者達に魔法で攻撃をしようとした。


 “まさか。レオルドが、我の幻覚を解くとはな!だが、この状況を回避するのは困難なはずだ。”


 そして、ゲリュウデスはセレネアや兵士達に幻覚を更に見せたのだった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る