92話〜偽装


 ここはネリウスの部屋の前。レオルドは考え込んでいたが、ここにこうしていても仕方ないと思い扉をノックした。


 ネリウスは素知らぬ顔で扉を開けレオルドを中に入れた。


 レオルドは中に入るとネリウスに一礼をし、


「ネリウス様、お久しぶりでございます。」


「レオルド、久しいな。それでそちらの様子はどうだ?」


「サアヤはまだ何も気づいている様子はありません。」


「そうか。では、今のところは大丈夫そうだな。」


「それで、話とはそれだけでしょうか?」


「ふむ、そうだな。そろそろ、お前をスカイサージュに戻し、私の仕事を本格的に手伝ってもらおうと思う。」


「私がネリウス様の仕事のお手伝いを……承知しました。」


「レオルド、城の事もあるだろう。ここに移るのは、そちらの手続きや引き継ぎ等が済み次第でよい。」


「はい、そのように致したいと思います……それでは、他に御用がないのであれば、城の仕事を途中にしてきてしまいましたので……。」


「そうか、そうだな。これといって他には用はない。ただ、前にも言ったと思うが。レオルド、分かっているだろうな。」


 レオルドはそう言われ少し間を置き、


「はい。分かっております……では、失礼致します。」


 ネリウスに一礼をし部屋を出てスカイネーブル城に向かった。


 そして、ネリウスとゲリュウデスはそれを確認すると、


 “行ったようだな……さて、我はこれからレマイスに、偽の情報を流してくるとするか。恐らくは、カリオスの回復祈願の為に、城の大聖堂で祈っているだろうからな。”


(では私は、レオルドが動き次第、行動に移したいと思います。)


 ゲリュウデスはネリウスの前から姿を消しレマイスの元に向かった。


 そして、ネリウスはそれを確認すると本を読み始めた。



 場所は移り、ここはスカイネーブル城の大聖堂の中。


 レマイスは神々の像の前で、国王カリオスの回復祈願の為に祈りを捧げていた。


(神よ……どうか、カリオスの病の元凶が分かり、治りますようにお願い致します……。)


 祈りを捧げているとゲリュウデスがレマイスの頭の中に話かけて来た。


 “レマイスよ!我はゲリュウデス。現在スカイネーブル全域に起こる異変について新たな事が分かった。その異変の元凶の一部が、このスカイネーブルの南東に位置する洞窟にある。そこを、詳しく調べるといいだろう…。”


 ゲリュウデスはそう言うと姿を消し、レマイスはそれを確認すると閉じていた目を開け、


(ここから南東の洞窟にその元凶の一部が……そうなるとレオルドとセレネアに調べさせた方がいいですね。)


 そう思うとレマイスは城の大聖堂を出て自分の書斎に行き、そこにレオルドとセレネアを呼んだのだった…。

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