60話〜黒龍とブラット

 ガルド達は急ぎシェイナルズ城に向かった。


 その途中1人の女性?……いや、レヴィがシェイナルズ城を眺め呆然と佇んでいた。


 ガルド達はレヴィに気づき話しかけた。


「おい!レヴィじゃねぇか。こんな所で何してる?」


「あっ、ガルド様、お久しぶりでございます。それにビスカにルルもお元気そうで。カトレア様もご無事で何よりです。それに、ルルと会うのは何年ぶりでしょうか、確かガルド様が最初にキリア城に来られた時以以来だったはず。会わないうちに随分と大人になりましたね。って!それよりも、これはどういう事なのですか?何故あのドラゴンが、シェイナルズ城で解き放たれているのですか⁉︎」


「それなのですが、ガルドが誤ってブラットに渡してしまったらしいのです。」


「なるほど。それで慌てて城に向かっているという事なのですね。それならば、私も微力ながらお手伝いさせて頂きたいと思います。」


「ああ、構わねぇが。クレイデイルに何か言われて来たんじゃねぇのか?」


「そうなのですが、この状況下でそれを行なっている場合ではないと思いますので。」


「確かにそうだね。急がないと不味いみたいだよ!」


 ビスカに言われガルド達は急ぎシェイナルズ城に向かった。



 場所は移り、ここはシェイナルズ城の敷地内の魔法研究施設があった場所。黒龍により施設は破壊され崩壊していた。


 黒龍は更に大きくなりレオルドとブラットを睨んでいた。


「おい!ブラット……このドラゴン、お前どうするつもりだ?このままだと城だけでなく城下街に迄被害が及ぶ。」


「そう言われてもなぁ。」


 黒龍はブラットを見るなりいきなり左手で鷲掴みした。


 余りにも一瞬の出来事でブラットは逃げる事が出来なかった。


 それを見たレオルドは、


「こ、これは、逃げるなら今のうちか?しかし……あ〜、助けなければいけない。だが黒龍を封印から解いたのはブラットだしな。ああ、どうしたらいい?このままでは私の計画が……。」


 レオルドは逃げようとしていたが立ち止まり頭を抱えた後、何かを思い深呼吸をした。


 そして、恐る恐るブラットと黒龍の方をみた。


 黒龍はブラットを掴んだまま話し出した。


「お前か?俺を封印から解いたのはガルドではないな。だが、何故かお前からガルドの嫌な臭いがしてくるのだがな。」


「えっと、ガルドは俺の親父だしなぁ。臭いが似てても変じゃないと思うけど。」


「なるほどな。ガルドの子供か。ならこのまま握りつぶすか?そうだな、喰ってしまうのがいいか。そうすればあのガルドに……。」


「ちょ、ちょっと待て!?喰うって?ははは……ど、どうすんだよ!このままじゃ、俺……マジで喰われるぅーーー!!」


 黒龍はブラットを喰おうと大きく口を開けた。


 ブラットは必死でその手から逃れようと手に力を入れたがビクともしなかった。


(……どうすんだよ。このままじゃ本当に喰われちまう……クソォォーー……何も出来ないのかよ。)


 そう思っていると黒龍の大きな口が目の前にあった。


 必死で暴れていたが、ブラットは無意識に黒龍の鼻の辺りを両手でおさえ力を込めていた。


 すると黒い光が黒龍を覆った。


「グオォォーーー!!」


 と雄叫びをあげた。


 レオルドはその光景を見て驚いていた。


(これがブラットの力なのか?)


 黒龍はいきなり苦しみ出しブラットを離した。


 ブラットは何が起きたのか分からなかった。


「うわ〜、いきなり何が起きたんだ?って、今の俺がやったのか?いや、こんな事言ってる場合じゃね〜し〜。このままじゃ地面に激突する〜!うわ〜、どうすんだよ〜!!」


 騒いでいたのでレオルドは溜息をつき呆れ果て、余りにもうるさいので、魔法を使いブラットが地面に激突するのを防いだ。


(自分ではまだ対処出来ないようですね。)


 黒龍は黒い光に包まれ苦しいらしく、


「グオォォーーー!!」


 と更に雄叫びをあげた。


 ブラットは黒龍を見た後レオルドを見て、


「あ、ありがとう。って……今、いったい何が起きたんだ?」


「さあ、お前がした事など分かる訳がないだろう!」


「ははは……確かにそうだよな。でも、黒龍はどうしたんだ?」


 ブラットはそう言いながら自分の両手を見ていたのだった…。

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