5話〜お祭り前に《前編》

 ここはシェルズワールドにあるグレイルーズ国。多種な獣人や獣人ハーフ達が住んでいる。


 周辺は自然が多く豊かだ。それにも拘らず街や村などには近代的な建物が多い。


 そして歌やダンスなどで賑わっていて明るい国である。




 ノエルとシャナは目的地まで、あと少しで着く予定だ。


 そしてここは、ルンバダの街である。


 だが、なぜかコンテストに参加することになってしまったのだ。


 噴水広場の前でノエルとシャナは、そのことについて話をしていた。


「ノエル様、本当に申し訳ありません。まさか、こんなことになるなんて」


「仕方にゃいよ。あそこまで頼まれたら私だって断りきれにゃいしぃ」


 そう言うとノエルは、その時のことを思い出している。




 ――……数日前……――



 ノエルとシャナがルンバダの街に着くと祭りの準備を盛大にしていた。


 それをみながら宿屋を探しているとノエルは街の雰囲気のことが気になる。


『シャナにゃん。この街でお祭りかにゃにかやるの?』


 ノエルが辺りを見渡しながら言うとシャナは、ニコニコしながら頷いた。


『もうそんな時期なのですね。数日後に丁度この国が出来て百周年となるのです』


 そう言いシャナはその場で、クルッと一回転する。


『あ〜、楽しみだなぁ〜。色々とやるんですよ〜。歌やダンスとか本当に色々と〜――……』


 ニコニコしてシャナは軽やかに踊りながら言った。


『色々か〜……気ににゃる。屋台とかもでるのかにゃ?』


 そう言いノエルは、ワクワクしている。


 それをみたシャナは嬉しそうに頷いた。


『勿論です! 色々な食べ物などの屋台が出るのですよ!! そして夜には花火が上がって恒例の行事が開催される』


 そう言いシャナは満面の笑みを浮かべる。


 色々と二人で話をして歩いていると舞台付近で、ウロウロしながら困った表情で考えこんでいる男が一人いた。


 男は溜息をつきながら何かを呟いている。


 それをみて二人は気になり近づき、その男に聞いた。


 するとその男はここの支配人だと名乗る。そして今回、開催される祭りを町長から任せられたと言った。


『あーこのままでは……祭りの夜に開催予定の目玉であるコンテストの出場者があまりにも少なすぎる……』


『それって……にゃんのコンテストにゃ?』


『もしかして毎年恒例のコンテストですか?』


 そう問いかけられ支配人は頷きノエルとシャナをみる。


『ええ、そうなんですけどね。毎年、予選するぐらい沢山の人数が集まります』


 そう言いながら支配人は、ウロウロと行ったり来たりしていた。


『ですが今年はこの時期になっても、まだ六人しか集まっていません。最低でも八人はいないと、コンテストとしてなりたたないのです』


『あの〜、それは分かったんだけどにゃ。だからにゃんのコンテストにゃのかにゃ〜って、さっきから聞いてるんだけどにゃ?』


 そう言いながらノエルは首を傾げた。


『あっ、そうでした。ノエル様は、この祭りのことを知らないのですよね』


 そう言うとシャナは説明を始める。



 このコンテストは毎年恒例の行事の一つで夜、花火が上がり開催だ。


 内容は……1・ファッション センス 2・歌唱力(自作) 3・ダンス (自作)  4・格闘センスなどを競う。



『……私は毎年たのしみにしています』


『にゃるほど……それは確かに楽しそうにゃ。でも人数が足りにゃいんじゃ、どうにゃるのかにゃ?』


『はぁ〜、それで悩んでるんじゃないですか〜。このままでは中止になってしまう。でも中止にすると楽しみにしてくれてる人たちにも申しわけない』


 支配人はそう言いながら、チラッとノエルとシャナをみる。


『あと二人いればなんとかなるのですが〜。それが中々でて頂ける人がいないのですよ〜』


 支配人は二人を、マジマジとみた。


『あの〜、お二方ともに強いのでは? それに、センスもあり可愛らしく……お声も素敵ですし』


 そう言い一呼吸おくと再び口を開く。


『あとはダンスができれば、このコンテストに参加する事が出来るのですが。もし急ぎの旅ではないのでしたら参加して頂けないでしょうか?』


 二人は最初は無理なので断わろうと思っていた。だが、その後に支配人の発した言葉に心を動かされる。


『どちらも可愛いし強そうです。絶対このコンテストでの優勝は、どちらかになると思うのですが……ダメでしょうか?』


 支配人は近くに置いてある装備品を手にする。


『今回の優勝賞金は十万ジエムと、このフリフリのピンクの花柄ワンピースの戦闘服。それと、この花の飾りが付いたピンクのカチューシャなのですが』


 それを聞きノエルとシャナは悩んだ。


『……それでも出てもらえませんか?』


『そうですね、やはり私は無理かと……』


『ちょ、ちょっと待ってにゃあぁぁ~! そのカチューシャと服……凄く可愛いにゃあぁぁ~!!』


 そう言いノエルは目を輝かせる。


『そうでしょう、そうでしょう。今年は国が出来て丁度百年になるお祭りです。そのため町長が、かなり奮発してくれましてね』


 支配人が最後まで言おうとした。


 だがシャナは、その言葉を遮る。


『でも、ノエル様が出られるのは構いません。ですが、流石に私では無理かと……』


『あぁ、どうしたら……。ノエルさんは出て頂けるとして、あと一人なんですよねぇ。誰か出て頂ける人がいれば助かるのですが』


 支配人は少し考えたあと何かを思い出したように口を開き話し始める。


『あっ!! そうそう……今回に限りなのですが。町長から本選参加者全員に優勝商品とは別に豪華な商品を用意すると言っていたのを思い出しました』


『それは参加するだけで貰えるのですか?』


『はい。町長は百周年という事もあり、かなり張りきってますので』


『でもにゃ? 出るのはいいんだけど〜』


 すると何処からともなく殺気が放たれ舞台付近に一通の封筒が刺さった。


 そして女の声が聞こえてくる。


『私は、ある人の命により伝言を持ってきた。そこに書かれている文章をしっかりと読めいいな!』


 そう言うと謎の女は、スッと姿を消す。


 その声を聞きシャナは遠くをみつめ首を傾げた。

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