6話〜お祭り前に《後編》

 あれから支配人は封筒を取り読み始める。その後、顔が徐々に青ざめていった。


『にゃんて書いてあったの?』


『はい、この手紙には今回の祭りを中止にしないと……この街を闇の炎で焼き尽くすと書いてあります』


 そう言い支配人は今にも泣き出しそうだ。


『それって大変にゃことだよね』


『ですが確か、あの独特の声。それに闇の炎ってセリフは……まさか……』


 シャナはそう言い俯き考え始める。


(あの声……まさかとは思いますが。ですが、もしそうだとして……なぜこんなことを?)


『シャナにゃん、どうしたの?』


 そうノエルに問われシャナは、ハッと我に返った。


『あっ……いいえ。ノエル様……申し訳ありません、少し考えごとをしてしまいました』


 そう誤魔化しシャナは、ニコリと笑みを浮かべる。


『大変なことになりました。このことを至急、町長に知らせなければいけない。ああ、今年はなんなんだぁ~』


 そう言いながら支配人は頭を抱えた。


『あっ! そうそう申し訳ないが……一緒に来てもらえませんか?』


『私は大丈夫だけど、シャナにゃんはどうかにゃ?』


 ノエルはそう言ったあと、ヒョイッと舞台から降りる。


『私も構いません。ただ、なぜ私たちが町長の所に行かなければならないのですか?』


『確かに、この件は……お二方に関係ないことです。それでも目撃者として来て頂けると助かるのですが』


 そう言われノエルとシャナは仕方なく支配人と町長の家に向かった。



 ★☆★☆★☆



 ここは町長の家。着くなり支配人は町長に、さっき起きたことを説明する。


『……という事なのです』


『ふむ、なるほど。これはどうしたものか?』


 そう言い町長はノエルとシャナの方を向いた。


 その後、町長はノエルとシャナの方へ歩み寄る。


『今、支配人から話は聞いた。それと改めて挨拶させて頂きたい。私はこの街の町長をしている、リスタルク・エベヤ。そして……』


『挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。この街の娯楽施設等の支配人をしている、マルクス・ハンウキと申します』


 ノエルが不思議そうに町長をみた。


『町長さんだよね? どうみても若くみえるんだけどにゃあ』


『確かに、そういえばそうですね』


『やはり、そう思われますか。父が早くに亡くなり私がこの街を任されました』


 そう言いノエルとシャナへ視線を向ける。


『あっ、そうそう余談になってしまいましたが。この街で今おきていることを話したいと思います』


『それは今回の件と何か関係があるのですか?』


『はい、ここ数日の間に頻繁に街に嫌がらせをしてくる連中がいて……』


 リスタルクは身振り手振りで話し出した。


 その話の内容とは……――以前、王家に納めるはずだった酒が夜のうちに全部根こそぎ盗まれていたとのことだ。


 そして、その場に先程と同じカードが残されていた。それと、そのカードにも同じ文面と獣勇士と書かれていたのである。



 ――……説明し終えるとリスタルクは、そのカードを二人にみせた。


 シャナとノエルはカードを確認する。そこには間違いなく同じことが書かれてあった。


『それにしても? にゃにか変じゃないかにゃあ?』


『変と言うと?』


 そう言いリスタルクは首を傾げる。


『ん〜、にゃにか引っかかる。にゃんで、この祭りをやめさせたいの? それに、こんにゃ大掛かりにしてまでもって……』


『このお祭りは、この国にとって年に一度のお祭りです。まして今年は百周年。今までになく盛り上がるはずだったんだ』


 そう言うとリスタルクは俯き床の一点を無作為にみた。


『なぜだ! なんで、こんなことに……。今まで、こんなことはなかった』


『私は毎年この祭りが楽しみで、みていました。ですが今年に限って、いったい何が?』


 シャナはそう言い心配な面持ちになる。


『そうなんです。なぜ今年に限って……。それで、もしよければ助けて頂けないでしょうか?』


『ノエル様。これはどうしましょう? あの声の主にも聞き覚えがあるような気がしますし。ただ似ていただけなのかもしれませんが』


 そう言うとシャナは、ノエルの方へ視線を向けた。


『それに私も、この件に関しては……どうも納得できません。ですので解明したいのです』


『ん〜……私も気ににゃてはいるんだけどね。そうだにゃあ……困ってるみたいだし、シャナにゃんがそうしたいにゃらいいと思うよ』


 そうノエルに言われシャナは軽く頭を下げる。


『ノエル様……ありがとうございます。それでは、お手伝いする方向で話を進めてください。それで私たちは何をすればいいのですか?』


『ああ、やって頂けるのですね……ありがとうございます』


 そう言いながらリスタルクは嬉し涙を浮かべた。


『そうでした。先程マルクスの方から今回のコンテストに参加されると聞いています。それで準備をしながら警備をお願いしたいのですが?』


 そう言われノエルとシャナは頷き今後のことをリスタルクとマルクスと共に話し合う。


 そして、その後ノエルとシャナは話を終え屋敷を出て宿屋に戻っていった。

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