11話〜前夜祭の夜{改}

 そして現在、夜になりノエル達は宿屋にいた。


「いよいよ明日だにゃ〜。歌とか曲とかダンスとか難しいにゃ。ねぇ、シャナにゃんは出来たのかにゃ?」


「そうですね。とりあえずは何とか出来ました。ですが、あまり自信がありません。それより、あれから何の動きもない、賊の事が気になります」


「ん〜、そうだね。今日の所はにゃにもにゃさそうだし。眠いから寝ようかにゃ」


 ノエルはベットに横になり寝たふりをした。


「そうですね。確かに眠いですし、明日に備えて寝ましょうか」


 シャナもベットに入り眠りについた。




 そして真夜中になり、ノエルはシャナが眠っているのを確認すると、


(ふぅ。シャナにゃんは、ぐっすり寝ているにゃ。それにしても……この数日、夜中あっちこち見て廻ってみたけど、にゃにも起こらにゃいし。

 ん〜、今日もにゃにもにゃいという保証はにゃいしにゃ。じゃ、今日も隠れて見廻りしてくるかにゃぁ)


 そう言うと小声で、


 《静音の衣!!》《疾風の速脚!!》《隠れみの影纏!!》


 そう言うと窓から外へと出ていった。




(それにしても。あれからにゃにもにゃいのは気味が悪いにゃ)


 ノエルはそう思いながら街の中を歩いていると、


(はっ!にゃんだにゃ?この感じは……舞台の方から誰かの気配がするにゃ)


 ノエルは舞台の方へと向かった。


 恐る恐る近づいて行くと、そこには数人の明らかに怪しい連中がいた。


 ノエルは相手に気づかれないように、気配を隠しながらその様子を伺っていると、そこには怪しい女がいて、


「んー、お前ら。その辺の機材を使えないくらいに破壊しておけ。私は他の物をとりあえず……」


 怪しい女は何かに気づき、


「あっ、あれは、まずいな……」


 その女はその場に身を潜め、ノエルの方ではなく別の方に視線を向けていた。


 ノエルは気になり、その方角に視線を向けると、そこには寝ていたはずのシャナがいた。


 シャナはノエルがとなりで寝ていないのに気がつき、心配で探していたのだ。


 ノエルはシャナの事も気になったが、


(ん〜、にゃんであの怪しい女が、シャナにゃんを見て隠れてるのかにゃ?そういえばあの時、シャナにゃんの様子、にゃんかおかしかったにゃ)


 シャナは舞台より離れた塀の辺りで、その怪しい女と鉢合わせした。


 その怪しい女は慌てて何処かに隠れようとするが、シャナはそれに気づいて、


「あ〜〜!!何でこんな所にいるのですか?」


「あははは……あのなこれには、ちょっと事情がなぁ……」


 シャナは不思議そうにその怪しい女を見ていた。


 ノエルはその様子を見て首を傾げた。


(えっと……これってどういう事にゃのかにゃ?シャナにゃんと、あの怪しい女とは、知り合いにゃのかにゃ?ん〜……)


 そう思いながら様子を伺っているとシャナが、


「それはそうと。この辺でピンクの髪でツインテールの女の子を見かけませんでしたか?」


(えぇ〜!!にゃんでシャナにゃん、私の事を?それに、ここで見てた事がバレたらまずいんじゃにゃいのかにゃ?どうしようにゃぁ)


 そう思いながらその場を去ろうとしたその時、数匹の蜂がノエル目掛け襲ってきた。


(ちょ、ちょっとこんにゃ時ににゃんで〜!?嘘だと言ってにゃ〜〜〜……)


 慌てて逃げようとしたが、一匹の蜂がノエルを刺し、あまりの痛さで、


「うわ〜〜!痛いにゃ〜〜!!」


 ノエルは泣きながら叫んでしまった。


 その為、自分にかかっていたスキルが解けてしまい、その怪しい女とシャナに気づかれ、


「誰だ!?そこにいるのは?」


 怪しい女はノエルの方に近づき見下ろした。


「あっ〜!ノエル様、こんな所にいらしたのですね。でも、何故ここに?」


「あはは、それはだにゃ……」


 誤魔化そうとしたが、怪しい女がノエルを捕まえ、


「ん?シャナ。このお子様が、お前がさっき探していたツインテールの女というやつか?」


「……って!こ、子供って……子供じゃにゃいにゃぁ〜!」


「あっ!そういえば、アリスティア。何でここにいるのですか?それと、もしかして、この前の脅迫じみた事をしたのは、あなたなのですか?」


「あっ!それは、あのな……」


「ん〜、ちょっと!この状態どうにかしてほしいにゃのだけどにゃ」


「あっ!忘れてたすまない!」


 アリスティアは、ノエルを地面に落とした。


「い、痛いにゃ!にゃんで落とすんだにゃ〜」


 ノエルが泣きながら言ったが、アリスティアは無視して、


「それはそうとシャナ。確かお前は、異世界の灰色の守護者様を召喚しに行ったのではなかったのか?」


「はい、アリスティア。召喚して来ましたが、あのその……すごく言いづらいのですが……」


「ん?それはどういう事だ?それで、その異世界の灰色の守護者様はどこにおられるのだ?会って見たいのだが」


「アリスティア。えっとですね……」


 シャナは今にも半泣きで顔をひきつらせているノエルの方に目をやり指を差した。


「ん?シャナ。この女がどうかしたか?」


 シャナは申し訳なさそうな顔になり、


「そのですね……こちらが異世界から召喚したノエル様で。えっと、異世界の灰色の守護者様なのですが。それで、この状況どうしましょうか?」


「まっ、まさか!?このお子様がか?シャナ!失敗したのではないだろうな?」


「失敗などしてはいません。それに、ノエル様は見た目は可愛らしいのですが、こう見えても強いのです!!」


「ふぅ〜ん。シャナが言うのであれば、そうなのだろうが……」


「シャナにゃん。この状況どういう事にゃのかにゃ?分からにゃいんだけど?それに、このアリスティアとは、知り合いにゃのかにゃ?」


「そうですね。ノエル様、このアリスティアは……」


 と言おうとしたところをアリスティアが遮って、


「あっ!シャナ、そうだった。今はそれどころじゃないのだ」


 アリスティアは、簡単に訳をシャナとノエルに話した。


「では、アリスティア。この一件はその革命派の嫌がらせ的な行動で、アリスティアはその手伝いをしているという事なのですね」


「ああ、そうなる」


「でも何故そんな事になってしまったのですか?まあ、あなた事なので何か思う事があってやっているのでしょう」


 そう言いノエルの方へと視線を向けた。


「ノエル様どうしましょう?明日のコンテストの参加は断った方がいいのでしょうか?」


「私は、どっちでもいいにゃ。ただ、理由が知りたいのだけどにゃ〜?」


「理由か……それは、シャナが旅だった後、城でおかしな事が起きはじめたのだ」


 アリスティアは理由を話した。



 グレイルーズの王デスクラウンが、部屋から出てこなくなり、何かおかしいと思い、気になり色々と調べた。


 そして国で今、何が起き何をしているのかが見えてきた。


 その事について調べ続けていると、革命派の存在に気づき、何か解決策はあるのではと、革命派のリーダーと話をつける事にした。



 アリスティアがその事を全て話すとシャナは、


「そうだったのですね。そうなると、これもその革命派の仕事のうちと……」


「ああ、そうなのだが。聞いた話だと、この祭りも国の財政を圧迫してるだけでなく、新しく町長になった……えっと、名前は確か……」


「リスタルクさんですか?」


「そうそう。そのリスタルクが、町長になってからなんだが。これは、城の倉庫に山積みになっている、書類を調べているうちに分かった事だ」


 そう言うとアリスティアは辺りを見渡し、


「この街にかかってる費用および、城への貢物などの品などがあまりにも高すぎており、おかしいので調べてみた」


 一呼吸おき、


「それで、革命派の連中と話した結果。とりあえず脅しをかけてみようという事になった」


「でもおかしいにゃ?確か、お酒が盗まれたとか言ってにゃかったかにゃ?」


「そういえば、城に収めるはずのお酒が盗まれたと言ってましたが?」


 アリスティアは少し考え込んでから、


「……お酒を、私たちが盗んだと言っていたのか?町長がか?」


「はい。そこにあの時に使ったカードに書かれていた物と、同じような文面で書かれた手紙が、酒蔵に置いてあったとの事でした」


「んー、おかしな事もあるもんだな。何で私や革命派の連中がお酒を盗む?そんな事しても何の利点も無い」


 アリスティアは下を向き、


「今回のも、ただの脅しであって、さっき舞台の辺りに、軽く爆破する程度の煙幕を設置しただけだ」


「確かに、おかしいにゃ。違和感があったのってこれだったのかにゃ?」


「私も、そう思いますが。どうしますか?コンテストに参加すると言ってしまいましたが?」


「そうだなぁ。町長の悪事が分かるような証拠が見つかればいいのだが……」


「明日までに見つければいいのかにゃ?」


「出来れば、それが理想だが。そんな芸当が出来る奴がいればの話になる」


「私が、今から行って、探って来てもいいんだけどにゃ?」


 アリスティアとシャナは不思議な顔でノエルを見た。


「ノエル様。それはありがたい。だが、流石にそれは無理ではないか?」


「確かに、ノエル様が強いとしても、流石に忍び込んで音も立てず気づかれないように、証拠を探すなど不可能ではないのか?」


「それは大丈夫だにゃ!私の職はアサシンだから、その手の事は得意にゃんだよね」


「すまないが、アサシンとは何だ?」


「確かに、聞いた事が無い職業ですね?」


「もしかして、こっちの世界にアサシンっていにゃいのかにゃ?」


 そう聞くとシャナとアリスティアは頷いた。


「ん〜、アサシンって言うのは、要は暗殺者の事で、姿を消したり、気配を消したりして、色々にゃ物を探す能力も持ってるのにゃ」


「なるほど。そんないい職業が異世界にはあるのだな。ノエル様の実力も見る事が出来るし、証拠を探す事も出来る」


 ノエルを見ると、


「それならば、もしそれが可能というのであれば、お願いしたいのだが」


 アリスティアに言われノエルは頷き、


 《静音の衣!!》《疾風の速脚!!》《隠れみの影纏!!》


 姿を消し町長の家へと向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る