200話~タツキ(龍騎)の彼女が現れる。

 あれからハクリュウはクロノアと誰か残っていないか探し歩いた。


 その途中でクルフをみつけると、ひとまず南東側から東付近の捜索をきりあげる。そして三人は中庭に向かった。




 ――場所は南側の祭壇に移る――



 タツキは祭壇に座りガインの様子をみながらハクリュウ達が戻ってくるのを待っていた。


(本来なら顔をだす予定はなかった。まさか……ハクリュウ達と共闘することになるとはな。それはそうと……なんだ? この嫌な感覚は……。

 さっきから誰かにみられているような気がする。それも……今最も逢いたくない者の気配だ。

 もし彼女も来てるとすれば……イヤイヤ……そうなら、ここから逃げないと)


 そう思いタツキは隠れる所がないかと、キョロキョロと周囲を見回す。


 するとその時、タツキの背後に人影が現れる。その人影はタツキの背後から抱きついた。


「タツキーみつけたのらっ!」


 その声を聞いたのと抱きつかれたためタツキの顔は青ざめ、ドッと全身から大量の汗が吹き出す。


「み、ミク……お前もここに来てたのか?」


「うん、そうなのら。タツキ……みんなも居ないみたいだし色々と聞かせてもらおうかなのら」


 そう言いミクはタツキの喉元にナイフの刃をあてた。すると軽く血が滲み出る。



 この女性はキャラ名ミク、本名が灰沢はいざわ未来みくと言い十八歳でタツキの彼女だ。

 姿はウサギの耳と、ピンク色のモフモフへそ出しバニーちゃんの格好をしている。髪色は濃い緑でツインテールだ。

 因みにミクは、かつて龍騎の本キャラであるリュウキでこの世界に来た時に一緒だったのである。まあその頃ゲームでも会っていたのだが。



 なぜかタツキはミクに勝てない。好きと云うのもあるのだろうが、一番の要因はミクの職業であるシーフのせいだろう。


「そ、そうだな……分かったからナイフを仕舞え」


「本当に逃げないのら?」


「ああ…………」


 タツキは今にも泣きそうである。


「分かったわ……だけど逃げたら拘束するのら」


 そう言いミクは、いつの間にかタツキの前に現れた。


 それをみたタツキの顔は引きつっている。


「じゃあ……この姿にした理由から話してもらおうかなのら」


 そう言われタツキは、ウンウンと頷いた。その後、理由を説明する。


「なるほど……自分の好みのキャラに作り替えた上に凄く恥ずかしい格好に変えた訳ねぇ……」


「あ、ああ……キャラ口調が崩れてるぞ」


「そんなものは、どうでもいい!! そのお陰で持ってる、モフぐるみが装備できないんだけど! それに合う装備がこれだけだし」


 完全にミクは素に戻っている。


「ハハハ……そうだな。そうだ! 作り替えるか?」


「錬金で?」


「それも、そうだが……ここにはクレイ・マルスもいる。何か良い物を創ってくれるかもしれない」


 そう言われミクは少し考えた。


「銀クレイが居るのか……それなら何か創ってもらえそうなのら」


 急にミクの態度が変わり、ニコリと笑みを浮かべる。


「それはそうと……なんでミクがここにいる?」


「あーうん、アキリシアに召喚されたからなのら」


 そう言いミクは、その経緯を話した。


「なるほどな……俺が家にこなくなったのが気になって久々ゲームにログインしようとしたら、この世界に来たってことか」


 そう言いながらタツキの顔は、ほんのり赤くなる。そして嬉しいのか、ニマっと笑みを浮かべていた。


 その後タツキは、ここまでの間に何があったのかをミクに説明する。


 そして二人は、そのあとも話をしながらハクリュウ達がくるのを待ったのだった。

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