199話~否定する、その想い
ここは名もなき城の遥か上空。この場所にはシェルギオスとブラグジオスがいる。
二龍は話をしながら中庭の様子をみていた。
「終わったようだな」
「つまらん……こうもアッサリ終わってしまうとはな」
「ブラグジオス……反省していないようだな」
そう言いシェルギオスはブラグジオスを睨んだ。
「ハッ! いや……これは……」
「ハァー……まあいい。それよりも……我は小さくなってハクリュウ達の所にいく。お前は、どうするのだ?」
「決まっている! 我もいく」
それを確認するとシェルギオスはチビ龍になる。
それをみてブラグジオスも、チビ龍になった。
そして二体の龍はタツキが居る中庭に向かい下降する。
★☆★☆★☆
「どこに居るんだ?」
そう思いながらハクリュウは誰か居ないか南東側を探し歩いた。
(クロノアは多分残っていると思う。ラシェルは……どこか遠くに避難したかもしれない。あの時、ラシェル一人じゃなかったしな)
そうこう思考を巡らせている。
「あっ、ハクリュウっ!」
そう言いクロノアはハクリュウのそばまで駆けてきた。
「クロノア、ここに居たのか」
「うん、そうだけど……なんか嫌そうな顔だね」
「ああ……最初にみつけたのがクロノアだったからな」
それを聞きクロノアは、ムッとしてハクリュウを睨んだ。
「私で悪かったわねっ! あーそっかぁ……あのラシェルってエルフのお姫様を探してたんでしょっ!!」
「何を怒ってるんだ? まあラシェルのことも探してたのは間違いじゃないけど」
それを聞きクロノアは杖でハクリュウの頭を思いっきり殴った。
「イテエェェエエエー……何すんだよ! 馬鹿になったら……いや、死んだらどうすんだ!?」
そう叫びハクリュウは涙目で殴られた頭を摩っている。そう頭に見事なほど大きいタンコブができていたのだ。
「このぐらいで死なないわよ。普通の体じゃないしね」
「そうかもしれないけど……まあいいか。それでこれから、ここに居るメンバーだけで中庭に集まって話し合いをする」
「……何かあったの?」
そう問われハクリュウは頷いた。その後、クロノアに何があったのかを説明する。
「えっ! ノエルとユリナ……ううん、ミリアがバルムとシェルズ城に向かったかもしれないって……どういう事なの?」
「俺も分からない。タツキさん達の予想だと探るためじゃないのかって」
「そうだとしても……危険すぎるわ。でも……誰もそれをみてなかったのよね?」
そう言いクロノアはハクリュウを見据えた。
「みていない……でもユウさんが、バルムと一緒にいたのは間違いないって言っていた」
「そうなると……確かに可能性大よねぇ」
「ああ、それで……そのことも踏まえて今後どうするかを中庭で話そうって」
そう言いハクリュウは中庭を指差す。
「分かったわ。だけど……ハクリュウは、まだ探すの?」
「担当区域だけ探してみようと思っている」
「じゃあ私も一緒に探してあげようか?」
それを聞きハクリュウは一瞬だけ考える。
「そうだなぁ……居ないよりはいいか」
「ちょっと嫌な言い方だけど……まあいいか」
そう言いクロノアは、ニコッと笑った。
それをみたハクリュウは、ドクンと鼓動が高鳴る。
(はて? なんだ……なんで動悸がする。ただ……クロノアは、いつも通りに笑っただけだろ。そもそも……俺がクロノアを好きになる訳ない。
それにクロノアだって……そういえば、シグマが言っていた。クロノアが俺のことを好きだって……イヤイヤ……アレは敵を欺くための嘘だよな。
って……俺は、こんな時に何を考えてるんだ。ハッキリ言って……クロノアは俺の好きなタイプから、かなりかけ離れてる。やっぱり気のせいだよなぁ)
そう思考を巡らせながらハクリュウは、クロノアをみつめた。
(なんでハクリュウの顔が赤くなってるの? まさか……やっと私の気持ちに気づいたとか……)
クロノアはそう考えると、ニタァっと笑みを浮かべる。
「おいっ、クロノア! 何変な妄想してるのか分からないけど……そろそろ行くぞ」
そう言うとハクリュウは歩き出した。
「べ、別に変な妄想なんかしてないわよっ! あー待って、置いてくなぁ~」
そう叫びクロノアはハクリュウを追いかける。
そしてハクリュウとクロノアは、いつものように言い合いをしながら誰か居ないか探し歩いていたのだった。
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