187話~選択肢

 ここは南側の祭壇より北東側。


 タツキはハルバードを構えデブピエロ悪魔を見据える。その後、ハルバードを上段に構え体勢を低くすると矛先をデブピエロ悪魔に向けた。


 《蒼龍槍矛斬重撃!!》


 そう叫ぶとタツキは、渾身の力を込めて素早くデブピエロ悪魔を連続で突いていく。



 ――カ……カッカーンー……グサッ! ……カッカーン……――……――グエェッ!!……――



 辺りにはデブピエロ悪魔の体にハルバードの矛先の刺さる音と、奇妙な叫び声が響き渡っている。


「まだだぁー!!」


 更に同じ攻撃をタツキは繰り返した。

 デブピエロ悪魔は、攻撃を受け奇声を上げ続ける。すると辺りに鉄の塊が散乱していった。そして体が赤く発光する。

 攻撃を受けデブピエロ悪魔は、硬化から軟化へ切り替えようとしていた。

 それに気づきタツキは、先程よりも素早く同じ攻撃を何度も繰り返す。

 デブピエロ悪魔は、軟化が間に合わないと思う。すると体を高速回転し始める。

 攻撃をしていたタツキは、その回転に巻き込まれ弾き飛ばされた。そしてハクリュウの近くに落下する。


「グハッ!?」


 タツキは地面に落下し体を強打した。


「タツキさん!?」


 それをみたハクリュウはタツキに駆け寄る。


「ハァハァ……ハクリュウ、問題ない。お前は、自分のことをやれ」


 そう言いながらタツキは立ち上がった。


「はい、それなんですけど……助言もらえますか?」


「こんな大変な時にか?」


「だからです。あの武器を……ガインを傷つけずに破壊か引き剥がす方法があればって」


 それを聞きタツキは、ハクリュウの頬を思いっきり殴る。


 殴られたハクリュウは、よろけて地面に尻餅をつく。


 タツキはハクリュウを睨んでいた。


「ハクリュウ……この状況で、そんなことを考えているのか? それにシェルギオスから、何も言われてない訳ないよな?」


「リュ……タツキ、我もハクリュウにそれは無理だと言った。だが、まだ諦めていなかったようだな」


 そう言いシェルギオスは、ハクリュウへ視線を向ける。


「だけど……どうにかしたいんだ」


 頬を摩りながらそう言いハクリュウは立ち上がった。


「そうか……ハクリュウには、荷が重いかもしれないな。なら、交換するか?」


 ”うむ、その方が良いかもな”


 ブルーシャギオスはハクリュウとタツキとシェルギオスの意識にそう話しかける。


「うむ……ブルーシャギオスお前と意見の合うのは嫌だが、我も同じだ」


「……タツキさんなら助けられるんですか?」


「いや、助けるつもりはない」


 それを聞きハクリュウは、睨みながらタツキに詰めよった。


「助けるつもりはないって……じゃあ、見殺しにするって云うんですか?」


「お前は偽善者か?」


「俺は……ただどうにかして助けたいだけです」


 そう言いハクリュウは俯く。


「なら聞く。一人と大勢の犠牲……お前なら、どっちを選ぶ?」


「そんなの……どっちも選べない」


「いや、選ばなきゃならない。そういう状況だってことだ」


 そう言われハクリュウは頭を抱える。


「選べって……誰も犠牲を出したくない。どっちか選ぶって云うなら、第三の選択肢を選ぶ……自分が犠牲になる方法を」


「おい、やけになってないか? この状況で、その選択肢は皆無だ」


「でも……だけど……」


 ハクリュウはそう言いガインの方へ視線を向けた。

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