186話~信念と技が効かない

 ここは名もなき城の中庭にある南側の祭壇。


 あれからハクリュウはシェルギオスに技を教わっていた。


「ありがとう、シェルギオス」


「うむ、今使えるのはごくわずかだ。それも、それほど強い訳でもない」


「うん、それで十分だ。それに強い力同士が衝突すれば、ある意味危険だからな」


 そう言いながらハクリュウは、サクサクとメニュー画面を操作する。


 それをみてシェルギオスは首を傾げる。


「何をしている?」


「あーこれか……サブ装備を変えてる。少しでも強化しておいた方がいいと思った」


 ハクリュウはそう言いながら、他のサブ装備欄から強い装備を持って来て交換していった。


「慎重だな。まぁ、それがお前の長所なのかもしれぬ」


 そう言いシェルギオスは、ハクリュウを見据える。


 装備を交換し終えるとハクリュウは、ガインを見据えながら右手を目の前に翳した。


「こいっ、シェルギオスの大剣!!」


 そう叫ぶと、翳した右手の前に魔法陣が展開される。その魔法陣は発光して、そこから白が目立つ大きな龍の大剣が現れた。それをハクリュウは、両手で掴んだ。


 白き龍の大剣を手にしたハクリュウは、一振りしてみる。すると風圧で地面の砂が舞い上がった。


「凄い威力だ。ただ軽く振っただけなのに……」


「ほう、お前はタツキよりも使い熟せそうだな」


「どうだろう……俺は、タツキさんの方が使い熟せると思う」


 そう言いタツキの方をみたあとハクリュウは、再びガインの方に視線を向ける。


「謙虚だな……タツキとは、やはり違う」


「……比べるな。確かにタツキさんに憬れてるけど、俺は俺だ。誰でもない……だから、自分にしかできないことをする」


「そうだな……それでいい」


 そうシェルギオスに言われハクリュウは頷いた。そして白き龍の大剣を構え直すと、キリッと引き締まった顔つきになる。


(なるべくダメージを最小限にして、できるだけガインを助ける方向で……それが無理でも……やれるだけのことをする)


 そう思いながらハクリュウは、大剣を斜め上に振り上げた。


 一方ガインは、もう殆ど意識を失いかけている。


「う……うう……ま、だ……」


 まだ意地を張っているようだ。このままでは、ガインが持っている巨大な銃剣に体が乗っ取られてしまう。


 ハクリュウはその様子をみて急がないとと思った。


 《白龍剣風斬乱撃!!》


 そう言い放つと大剣を一閃する。その後、風を纏った大剣の刃をガインの持つ巨大な銃剣にあてていった。


 大剣の刃からは、途轍もない風圧が放たれている。



 ――ドンッ……カァーン……ギギギギギィー……――



 辺りに大剣と巨大な銃剣があたる音が鳴り響いていた。


 だが、それでもガインの持つ巨大な銃剣を破壊することができない。


 何度かハクリュウは、同じ技を繰り返すが駄目だった。


(クソォ……)


 そう思いハクリュウは、大剣を構え直しガインを見据える。そして、次に攻撃する技を何にするか考えていた。

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