2話〜新たな旅の仲間《前編》

 あれからハクリュウとシエルは、あかね村を旅立った。


 そして数日が経ち……現在、ハクリュウとシエルは道を歩いている。


 周囲には草原が広がっていた。そして、赤、青、黄、ピンク、色々な花々が咲いている。そんな花々の周辺を、綺麗な蝶が飛んでいた。


 ハクリュウは、前髪を触る。


(そういえば……この世界に来た時は、もっと髪が短かったよなぁ。今じゃ、かなり伸び放題だ)


 そう思いながら歩いていると、ふとあることに気づいた。


「シエル、旅をしていて思ったんだけど。この世界って思っていたよりも平和だよな……これってどういう事なんだ?」


「平和では、いけないのですか?」


 シエルが驚いたように問いかける。


「あっ! そ、それはそれでいいんだ」


 一呼吸おき再び口を開いた。


「ただ魔獣も、それほど強い訳じゃない。こんなに平和なのに、なんで俺が召喚されたんだろうって」


 少し歩いてからシエルは、戸惑った表情でハクリュウの方に視線を向ける。


「申し訳ありません。今は、何も言えないのです。そのことについては領主様に直接、聞いて下さいませ」


 そう言われハクリュウは、余計に困惑した。


(ん〜……なんか訳が分からない)


 ハクリュウは、そう思いながら歩いている。


(アニメとかなら、異世界に召喚されたヤツは必ずその世界を救う的存在。

 それにその世界が滅亡寸前だったり、なんらかのトラブルを抱えている……みたいな感じなんだけど)


 なぜなのかと思考を巡らせていた。


(どうみても、この世界は平和だと思う。でも召喚されたんだから、トラブル的なことなのか?

 あ〜、考えれば考えるほど分からない。はぁ、考えても俺の頭がパンクするだけだしな)


 ハクリュウはシエルに視線を向ける。


 (ここはシエルの言う通り、領主に合って事情を聞くしかないかぁ)


 そう自問自答しながらハクリュウは歩いていた。


 するとその視線をシエルは感じとり、チラッとハクリュウの顔をみる。その後、また歩き出した。


(まだ、着かないのか? 流石にしんどい……)


 そう思いながらハクリュウは歩いている。すると、いつの間にか森の中にいた。


 相変わらず殆ど喋らないクールな表情でシエルは、ハクリュウの一歩を前にいる。そして、警戒しながら歩いていた。


「キャァァー!!」


 森の奥から女の悲鳴が聞こえてくる。


「おいっ!? こら待ちやがれ〜!」


 そう言いながらヒュウーマンの男性が、その声の主を追って森から出てきた。


「だっ、誰か助けて〜!」


 そう言いながら女が、ハクリュウとシエルの前に現れる。


 そしてその女は、ハクリュウとシエルをみた。


「あっ!! お願いです。スケベじじいに、もう少しで拐われそうになり慌てて逃げてきました。た、助けて下さい」


 するとその追手の男が、ハクリュウとシエルの前に現れる。すると、その女をみるなり怒鳴り付けた。


「このアマァァー!? 逃げるなー待ちやがれっ!!」


 その男は怒鳴りながら、その女を追いかけようとする。


 それをみたハクリュウは、男の眼前で剣を抜き突き立てた。


 男は慌てて剣を避けたが、近くにあった岩に体当たりしてしまい動けなくなる。


 ハクリュウは動けないところを、すかさず持っていた縄でその男を縛りあげた。


 だが、なぜか男は泣きそうになっている。


「これじゃ逃げられてしまう。あ〜、どうしたらいいんだ〜」


 その様子をみてハクリュウは、あの女の言っていたことと明らかに違っていておかしいと思った。


 そして、辺りをくるりと見渡してみる。すると、あの女は既にいなくなっていた。


「あれ? シエル。さっきの女は?」


「あの方なら、もう既に逃げていかれましたが」


 男は俯き溜息をついている。


「はぁ……あの女はなぁ、俺の全財産を盗んでいきやがったんだよ!!」


 そう言い男は、ハクリュウを睨み付けた。


(これって、俺がその女逃したってことは……)

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