8話〜新たな旅の仲間


 ハクリュウとシエルはあかね村から旅立ってから、数日が経ち2人は草原が広がる道を歩いていた。


 辺りには赤、青、黄、ピンクなど色々な花々が咲き綺麗な蝶が飛んでいた。


 ハクリュウはある事に気がついた。


 前髪を右手でさわりながら、


(そう言えば、ここに来て、数日が経っているなぁ。来た時は髪は短髪だったはずなのに、今ではかなり伸び放題だし。)


 そう思いながら歩いていると、ハクリュウはふとある事に気がついた。


「シエル。旅をしていて気になってたんだけど?思っていたよりも、平和な気がするんだよなぁ?」


 シエルは不思議そうに。


「平和ではいけないのですか?」


 シエルは驚いた様に言ったので、ハクリュウは慌てて、


「あっ!そ、それはそれでいいんだけど。ただ、旅してて思ったんだけど。モンスターもそれほど強いわけでもないし、こんな平和なのに、何で俺が召喚されたんだろうって。」


 シエルは少し歩いてから、戸惑った表情でハクリュウの方を向き、


「申し訳ありません。今は、私からは何も言えません。とりあえず領主様にお会いして直接聞いて下さい。」


(ん〜、何か訳が分からない。普通アニメとかなら、異世界に召喚された奴は必ず、その世界を救う的存在で、その世界は滅亡寸前だったり、何らかのトラブルを抱えていたりなんだけど……どうみてもやっぱり、この世界は平和なイメージだし。でも、召喚されたんだから、何らかのトラブル的な事なのか?あー、考えれば考えるほど分からない。はぁ、とりあえずこれ以上考えても、俺の何も無い頭がパンクするだけだ〜。シエルの言う通り領主に合って事情を聞くしかないか〜。)


 考えながら歩いていると、シエルがちらっとハクリュウの顔を見てまた歩き出した。


 しばらく歩きハクリュウは、


(まだ、つかないのか〜。流石にしんどい。)


 そう思いながら歩いていると、いつの間にか森の中に入っていた。


 シエルは相変わらずハクリュウの近くを離れず、殆ど喋らないクールな表情でハクリュウの一歩前を歩いていた。


 そしてしばらく森の中を歩いていると森の奥から。


「キャーーーー!!!」


 女の悲鳴と共に奥の方から、その声の主を追って1人の男が、


「おいっ!!こら待ちやがれ〜。」


 そしてその女は泣きそうな声で、


「だっ、誰か助けて〜。」


 ハクリュウとシエルの前に現れ、女はハクリュウとシエルをみるなり、


「あっ!!お願いです、このスケベじじぃに、もう少しで拐われそうになり、慌てて逃げてきたのですが。た、助けて下さい。」


 すると、その追手の男がハクリュウとシエルの前に現れた。


 そして、その女を見つけ怒鳴り付けた。


「このーーーアマーーー!!!待ちやがれ〜!!!!」


 その男は怒鳴りながら追いかけ回そうとしたが、ハクリュウはそれを見て、男の目の前で剣を抜き突き立てた。


 男は慌てて剣を避けたが、近くにあった岩に体当たりしてしまい、ハクリュウは動けないところを、すかさず持っていた縄でその男を縛りあげると、男は何故か泣きそうな声になり、


「これじゃ逃げられてしまう。あ〜、どうしたらいいんだ〜。」


 その様子を見てあの女の言った事とはあきらかに違い何かおかしい事に気がついた。辺りをくるりと見渡してみると、その女は既に居なくなっていた。


「あれ?シエルさっきの女は?」


「あの方ならもう既に逃げていかれましたが?」


 男は俯向き加減で溜息をつくと、


「はぁ、あーー、あの女はなぁ!俺の全財産盗んでいきやがったんだよ〜〜!!」


 男はハクリュウを睨み付けた。


(これはもしかして、俺がその女逃したってことは、これは非常にまずいのでは。)


 考えていると男は溜息をつきながら、


「ホント、泣きたくなるよ。まぁ、俺もあの女に騙されたのが悪いんだから仕方ねぇんだけどな。あの女に言い寄られ……クッ、まさか、あの女が泥棒だとは思わなかった。」


 ハクリュウは、申し訳なさそうに男の縄を解き、


「ごめん。まさかあの女が、泥棒だったなんて思わなかったから。」


「仕方がない。お前だってあの女に騙されて、俺を捕まえたんだろ?」


 ハクリュウは下を向き頭を抱えて、


「ああ、そうだな。悔しいくらい思いっきり騙されたぁーーーー!!!!!」


 と大声で叫んだ。


 ハクリュウはシエルと男を見てから、


(この状況どうする。シエルはただ俺を見て何か言いたそうだし。このおっさんは俺を睨んでるし……って言うかなんで俺が……。)


 空を見上げ左手で頭を搔きむしりながら考えていると、


 男が立ちあがり両膝とお尻の汚れをパンパンっと落とした後に、


「ふぅ〜、俺は一文無しになるし。これじゃな〜。」


 男は両手をパンと叩き何かを思いついたかのようにハクリュウとシエルに話しかけてきた。


「そうだ。俺が金を取り返せなかったのも、お前達のせいでもあるわなぁ〜。なら、その責任をとってもらおうか!」


 その男は少し意地悪そうな顔つきで言った。


 それを聞いて、シエルがいつものクールな感じで男をみつめながら言った。


「先程から、色々とお話を聞いて見ていましたけど。確かにハクリュウ様も騙されたのは悪いかも知れませんが、誘惑され騙された貴方の方が、もっと悪いのではないのでしょうか?」


 そしてハクリュウは頭を抱えながら、


(ちょ、ちょっとこれって、逆効果なんじゃ無いのか?この手の相手は……。)


 そう思っていると、男がまた溜息をつきながら、


「言われてみれば、確かにそうだな。さて、そうなると、これからどうしたもんか?」


 男は考え始めたが、すぐにハクリュウをみて、


「ん〜、お前、結構いいもの装備してるじゃねぇか。それに、このねぇちゃんもなかなか強そうだし。何か訳ありの旅なのか?」


 その男は不思議そうに言った。


 それを聞いたシエルは慌てて話題を変えた。


「ハクリュウ様。急がなければ日が暮れてしまいますので、そろそろ行きましょう。」


 少し深刻そうな顔つきで言い、ハクリュウは空を見上げた後シエルをみて、


「確かに、そろそろこの森を抜けないと不味そうだな。」


 それを聞き男は腕を組みながら、


「うむ、なるほどなるほど。あまり人様には言えない様な旅なわけか。」


 にやにやしながら勝手に頷き、何かを納得していた。


 何を思ったのか男は2人に歩み寄りポンと肩を叩くと何かを決心したかの様に、


「護衛必要じゃねぇか?特に追われる身なら!」


「あっ、えっと……別に追われてるわけじゃ無いんだけど?って言うか、何でそんな話しになるんだ。」


 男が不思議そうに、


「ん〜、まぁ、何にしろ俺は一文無し、そして金が欲しいんだから、お前らが何だって構わねぇ。目的地までの護衛で構わねぇから、とりあえず雇え!」


 力強い笑みを浮かべてそう言った。


 シエルは男を見てから、ハクリュウの方に顔を向け、


「ハクリュウ様どうしましょう?多分、来るなと言ってもついてくるかと。まぁ、お金のことは問題ないと思いますが?この前の事もありますし。一応護衛は1人でも多い方が助かるのも事実です。」


 ハクリュウは目を閉じ考え始めた。


(んー、確かに、この前はアリスティアに襲われたが?護衛をつけるほど、ここのモンスターが強いとは思えない。でも、シエルは何か知っているらしいが言わない。この国とこの世界で、今何が起こっているのか?ん〜、しょうがない。今は状況が見えないし、知っているシエルの判断に任せるしかないか。)


 ハクリュウは考えた後、溜息をつきシエルをみて、


「俺は、今の状況が分からない。だから、判断は俺ではなく。悪いけど、シエルがして欲しい。」


 ハクリュウに言われシエルは頷き、


「分かりました。それでは、ハクリュウ様が言われた通りにいたします。しばらくは私が判断して行きたいと思います。」


 シエルは男の方に顔を向けて、


「貴方の腕がいかほどかは分かりませんが、とりあえずは、いないよりはマシと思いますので、雇う事にします。」


 それを聞いて男は、両手を胸ぐらいの位置でグーにして、よしと言わんばかりの笑みを浮かべて、


「ふぅ〜、ありがてー、これで食いぶちに困る事もなくなった!」


 すると何か思い出した様に男は話し出した。


「あー、そうだ!自己紹介忘れてたな。俺はグロウディスってんだ!歳は31。それと前までは城の騎士団で働いてたんだ。これでもな!」


 それを聞いたシエルの顔色が変わり下を向いていた。


 だが2人はそれに気づいてはいなかった。


 そして、それから3人はその場を離れ城へと向かったのだった…。

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