179話~試される

 ここは名もなき城の中庭にある南側の祭壇。未だ揺れは激しさを増す一方である。


 あれからハクリュウは、頭を抱え蹲り苦しんでいた。


(……クッ、き……キツい。これで……能力の……一部、って。全ての、能力……を体に……取り込んだ……ら)


 そう思った瞬間……。


「う゛わ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ー……」


 全身に激痛が走る。


 なんとかハクリュウは堪えた。だが意識を失い地面に、バタンと倒れる。


 上空でみていたシェルギオスは、それを確認した。そしてハクリュウに何が起きたのか把握する。その後、その様子を見守っていた。



 ★☆★☆★☆



 ……――ハクリュウは真っ白な空間にいる。


「ここはどこだ?」


 意識が朦朧となりながら辺りを見渡した。


 ”ここはお前の意識世界だ”


「それって……」


 そう言われハクリュウは困惑する。


 ”うむ、どうしたものか。何も自覚しておらぬな”


「自覚?」


 ”そうだ……お前がこの世界に召喚されて来た理由と自分の立場。それだけじゃない覚悟もないようだ”


 それを聞きハクリュウは更に困惑する。


「言っていることが分からない。その前に誰なんだ? さっきから訳の分からないことばかり言ってるけど」


 ”ほう、思っていたよりは威勢がいいようだ。ふむ、我がだれか……。聞きたいか?”


「ああ、当然だ! それに、いつまでもこんな所に居る訳にはいかない」


 ”なるほど……確かにな。だが、本当にそう思っているのか?”


 そう聞かれハクリュウは、声の主が言いたいことが分からず余計に困惑した。


「決まってるだろ! そうじゃないとみんなが……」


 ”みんながどうした? まぁ……今のお前が何をしようと状況は変わらんぞ”


「そ、そんなのやってみないと分からない!」


 そう言ったもののハクリュウは、なぜか声の主に言われたことが気になり始める。


 ”やってみないとか……笑わせるな。実力もない……いやそれだけじゃない、なんの努力も準備もしていない者が無謀な行動にでればどうなる?”


「それは……。そうだな……冷静になれば分かることだ。昔、同じようなことをリュウキさんに言われたことがある。そうかこれは……」


 ”うむ、これは思ったよりも頭があるようだ。そういう事……我の存在に気づけたのなら問題ないな”


 そう言われハクリュウは頷いた。


「お前は、シェルギオスの一部。そして俺の意識の一部と繋いで試したんだな」


 ”ああ、そういう事だ。だが……まだ覚悟が足りていない。さてどうしたものか……”


「覚悟? 意味が分からない」


 そうハクリュウが言うとその声の主は溜息をつく。


 ”命をかける覚悟だよ”


「ってことは……消滅するってこともあるのか?」


 ”当然だ。だから、お前はなんの自覚も覚悟もないと云うんだよ”


 そう言われハクリュウは青ざめる。


「……そうだよな。よく考えたら、これはゲームじゃない。それに本当の体じゃないとしても……魂が一緒に消滅すれば」


 ”そういう事だ。さて、ハクリュウどうする? 命をかけるか、それとも……”


 そう問われハクリュウは決心し口を開いた。


「惑わせるな、そんなの元から決まっている! いや、これは……自分の弱い部分だよな。それが……問いかけて」


 ”そうだな……うむ、まあいいだろう。先程よりも、マシだ”


 そう声の主が言い放つとハクリュウの意識は飛ばされる――……

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