173話~強制召喚とミリア恋をする

 ここは名もなき城の中庭にある南側の祭壇から北東側付近。


 タツキはラミアスから一方的な指示を告げられる。


(……召喚するのはいいが。その間、デブピエロ悪魔コイツをどうするんだ? 恐らくハクリュウの方に向かう……いや、俺の方を邪魔するかもな)


 そう思いデブピエロ悪魔を見据えた。


(どうする? 今ここに居る者で、手の空いているヤツがいない。クソッ……ん? そうか……スキルを使って、強制的にアイツを呼ぶか)


 そう考えがまとまるとタツキは、ゆっくりと迫りくるデブピエロ悪魔から間合いを取る。


 《仲間強制召喚!!》


「こい、ユウ・ライオルス!!」


 そう叫びながら、メニュー画面の【友人・仲間】呼び出しアイコンにタッチした。……叫んだ言葉は、ただそう言いたかっただけだ。



 ★☆★☆★☆



 ここは名もなき城の南側の外である。そこには大小様々な岩石が至る所にあった。



 少しだけ時は遡る――……。



 辺りは、まだ薄暗い。


 あれからユウは、ミリアをここまで連れて来ていた。そのあとからノエルとバルムがくる。


 ユウは、バルムを睨んでいた。そうバルムがノエルと一緒に城の中から出て来たからである。


「なんで、お前がノエルと一緒にいる?」


「それって、俺に言ってんのか?」


 そう言いバルムは、ユウを鋭い眼光で睨み返した。


「待って、ユウ兄! バルムこの人は、敵だったかもしれにゃいけど……騙されていたみたいにゃの」


「黙ってろ、ノエル! そうかもしれない……だがな、手を繋いで一緒に出てくることないよな!?」


 そうユウが言うと三人の目は点になる。


 その後バルムは、ユウが何を言いたいのか分かり腹を抱えて笑った。


「ワハハハハ……ちょ、待て……。おい、まさか妹を取られると思ったのか? てか……シスコン、か。コリャ、笑えるな……ククク――……」


「シス……悪いかっ!! ノエル、ソイツから離れろ! ぶっ殺してやる」


 そう言いユウは身構えると、バルムを睨み威嚇する。


「おお、やる気か。面白れぇ、相手になってやってもいいぞ。丁度、誰かとやり合いたかったんでな」


 バルムは口角を上げると身構えた。


「待って、今はこんなことしてる場合じゃないよ」


 オロオロしながらミリアはそう言い二人を止めようと試みる。


「口出すな……これはな」


 そうユウが言いかけた。と同時にユウの体が眩く発光して、パッと忽然と消える。


「はあ? コリャ、どういう事だ!? 逃げたようにもみえねぇが……」


「あーえっと、あの発光って……もしかしてだけど……フレンドを呼び出す時のに似てる気がする」


「ミリアにゃん、多分だけど……そうだと思う。誰かが、ユウ兄を呼び出したのかも」


 そう言いノエルは城の方をみた。


「……なるほど。あの様子じゃ、強制的に呼び出しをくらったみてぇだな。ふぅ~、肩透かしをくらった気分だが……まぁいいか。ここでやり合っても、仕方ねぇしな」


 それを聞いたミリアは、なぜか顔を赤らめる。


(え、えっと……どうしたんだろう、ドキドキが止まらない。ただ、このバルムって人の言葉を聞いただけなのに……)


 そうミリアはバルムの発した言葉が、カッコいいと感じてしまい無自覚に恋をしてしまったのだ。


「ミリアにゃん、どうしたの? にゃんか、ボーっとしてるけど」


「あ、ごめん。ううん、大丈夫。ちょっとお腹すいたなぁと思ってさ」


 そう言いミリアは、笑い誤魔化した。


「それって無理があるようにゃ気がするけど……まぁいいかぁ。それより、どうする?」


「そうだな……俺は、やることがあるからここには居られねぇ」


「うん、じゃあ……私たちはここで待機しよう」


 そうノエルが言うとミリアは、考えたあとバルムの方をみる。


「あの、どこに行くんですか? もし、私も行って大丈夫なら……」


「どういうつもりだ? 俺の監視って訳でもないみてぇだが……」


「そうだよ……ミリアにゃん。さっきから変、いったいどうしちゃったの?」


 そうノエルに言われミリアは、真剣な顔になった。


「私も分からない。だけど、一緒に居たいと思ったんだ」


「変なヤツだな。俺は、シェルズ城に戻って確認してくる。だから、ついてくるってんなら危険だぞ」


「……確認? それって、却って危にゃいんじゃ」


 ノエルにそう言われバルムは頷く。


「そうだろうな。だが、本当に騙されてたなら……仲間を助けなきゃならねぇ」


「なら、余計に一人じゃ危ないよ。私、これでも一応は異世界から召喚されてる。イレギュラーらしいけどね」


「イレギュラー……まさかお前、神殿の祭壇でニック様が無理やり召喚した者か?」


 そうバルムに問われミリアは頷いた。


「なるほどな。そうなるとバレて、危険だ!」


「それにゃら、変装すれば大丈夫だと思う。私もついていく、これでも一応は正規で召喚されてるしね」


 そう言われバルムは、困惑する。


 そしてその後もバルムは、どうにか二人が諦めてくれないかと思いながら言い聞かせていたのだった。

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