171話~白と黒のドラゴンの会話

 ――以後、今回は龍語での会話となる――



 ここは名もなき城の上空。白きドラゴンのシェルギウスは、ハクリュウの様子を覗きみていた。


「まだのようだな。……ん?」


 ブラグジオスが上空へと舞い上がってくるのをみて、シェルギウスは不思議に思い首を傾げる。


「久しいな、ブラグジオス……何年振りだ? お前の姿がみえず、寂しかったぞ」


「それは、皮肉か。心にもないことを言うな」


 そう言いブラグジオスは、シェルギウスと同じぐらいの高さまできた。その後シェルギウスを、ギロリと睨んだ。


「いや、これは本当だ。流石に、喧嘩する相手がいないと暇でな」


「なるほど、そういう事か。まぁいい、それより……そっちはどうだ?」


「うむ、資格はあるようだ。だが、器がまだ未熟……そのためか覚醒とまでいかぬ」


 それを聞きブラグジオスは、ハクリュウへと視線を向ける。


「そうか……まぁ、今回は能力の一部を授けるだけ。そんなに時間はかからんだろう」


「ああ、そういうことだ。そういえば、お前の方はどうした? やけに余裕のようだが」


「はあ、予想外だ。クロノアは、資格を失ったのでな」


 そうブラグジオスが言うとシェルギウスは、目を丸くし驚いた。


「それはどういう事だ!? 証が出たのであれば、その資格はあるはず……どうなっておる?」


「知らん……我もこんなことは初めてだ」


「そうだな……今までなかったことが起きている。だが、そうなると……お前の証を得られる者が他に居るという事になるな」


 それを聞くとブラグジオスは、城を見回す。


「クロノアは資格を失ったが、まだそうだとも言えん。だが、シェルギウスの言うように……他の資格者も居ないとは言い切れんな」


「そういう事だ。それにしても、ラミアスは……何を考えておるのだ」


「さあな……あの女神が考えていることなど分からんし、知りたいとも思わぬわ」


 そう言いながらブラグジオスは、神々の塔がある方角をみる。


「確かに、そうだな。だが創造神アークラウムは、このことを知っておるのか?」


「それは、どうだろうな。以前のことも、隠しているようじゃが」


「うむ、そのためか。依然として、この世界が良くならんのは……」


 そう言いシェルギウスは、ハァーっと溜息をついた。


「……良くならん。いや、それ以上に悪化しているようにしかみえぬぞ」


「そうだな……。恐らくラミアスは自分が犯した失態を、なんとかしようとしている……自分の力でな」


「無理だろう……このままだと、余計に悪化するだけだ」


 そう言うとブラグジオスは、神々の塔があるである方を睨みみる。


「だが今回は分からぬぞ。予想もしなかったことが、立て続けに起きておる」


「それは、クロノアのことか? それに……そうだな、リュウキもこの世界に来ている。名前と姿を変えてな」


「……!? それは、どういう事だ。あり得ん……あのリュウキが、それも名前を変えて。それで、今の名は?」


 なぜかシェルギウスは、目を輝かせ喜んでいた。


「シェルギウス、余程リュウキのことが好きなようだな。うむ、名前か……タツキ・ドラゴナイトと名乗っておる」


「タツキか……それで、どこに居るのだ?」


「城の中庭で、我の分身と戯れておるぞ」


 それを聞きシェルギウスは、中庭に居るタツキを探してみる。


「……あれか、確かに姿が変わっている。だが、魂の色はそのまま……白い」


「そのようだ。そういえば……ハクリュウの魂の色は?」


「……不思議と白ではない、虹色をしている」


 そう言いシェルギウスは首を傾げた。


「虹色だと? どういう事だ……今まで、みたこともない色だな。それに……お前の証を得ることができる者は」


「ああ、白のはず。だから召喚された時、違和感があり……不思議だったのだ」


「そうだろうな。我も何がなんだか分からん。黒の魂を持つクロノアが、我の資格を失った。どうなっているのだ。そもそも、何が起きようとしている」


 ブラグジオスがそう言うとシェルギウスは、分からないと言い首を横に振る。


 そしてその後もシェルギウスとブラグジオスは、色々な話をしていたのだった。

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