169話~白きドラゴン舞い降りる

 ここは名もなき城。この城の上空では、まばゆく発光する巨大な魔法陣が展開されていた。それと連動しているかのように、モクモクと黒い雲が立ち込める。



 ――そんな中、城内では……。



 中庭の南側にある祭壇付近では、ハクリュウが左手を天高く掲げていた。


 そして東側の通路では、クロノアが少し先の方に居るブラグジオスに目掛け左手を翳している。


 その二人の左手の甲には、既にドラゴンの紋章が現れて光っていた。


 それらを確認し二人は、ほぼ同時に叫んだ。


 《 《聖なる力よ 我が下に!!》 》と……。


 すると二人の掲げている左手からは、魔法陣が浮かび上がる。それと同時に、光が放たれた。



 ★☆★☆★☆



 ここは南側の祭壇。ハクリュウの掲げている左手から放たれた白い光の柱は、遥か上空へと向かっていた。


 その白い光の柱は、空に展開されている巨大な魔法陣を貫く……。



 ――ギャオォォオオオーン!!――



 と、遥か上空から途轍もなく大きな咆哮が周囲に響き渡った。それと同時に、白き光の柱を伝うように何かが降りてくる。そう、それは白きドラゴンだ。


 その白きドラゴンは、旋回しながら城の中庭の真上までくる。


 城内にいる者たちは、その光景を呆然とみていた。


 その後、白きドラゴンは中庭を覗き込むようにハクリュウを見据える。


 “我は、シェルギウス。白き証を手にし勇者よ、汝に我が能力の一部を分け与えよう。だが使い熟せるかは、汝の中に秘めし器次第”


 そうハクリュウの思考へと語りかけた。


 ハクリュウはその声を受け取り上空を見上げる。


(これって、俺の意識に話しかけてるのか? それに、器次第って……)


 “そういう事だ。覚悟は、できているか?”


(そうだな……ああ、考えてる場合じゃない。分かった……覚悟する!!)


 そう心の中で言うとハクリュウはシェルギウスを見据えた。


 “うむ、ほぼ即答だな……いいだろう。まぁ能力の一部だ……それほど、負担はかからん。それでは、名を教えてくれ”


 そうシェルギウスに言われハクリュウは自分の名前を教える。


 それを聞くとシェルギウスは、龍語なのか聞きなれない言葉を発した。すると、シェルギウスの真下に魔法陣が展開される。


 するとその魔法陣から細い光の柱が伸びて、ハクリュウへと向かっていった。


 その光の柱は、ハクリュウの左手の甲のドラゴンの紋章に当たる。それと同時に、全身に激しい痛みが襲う。


「うわあぁぁあああー……」


 そう叫び頭を抱え蹲った。


(やはり、一部でも……まだ早いのか。うむ、ラミアスは何を考えておる。そして……このハクリュウに、何をさせる気だ)


 そう思いながらシェルギウスは、ハクリュウを心配そうにみつめる。


 そしてハクリュウが痛みから解放されるまでの間、シェルギウスは待っていたのだった。

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