158話〜東側の広い通路〜破壊と張り合う〜

 ここは東側の広い通路。クロノアは、タツキに指示されるままディアナのポケットから黒魔石の腕輪を探り取る。


 その後、ディアナから黒魔石のペンダントをはずし自分の首に下げた。


「……このあと、どうすればいいのかな?」


「あとは、クレイが持っている鎌でブラグジオスを元の姿に戻すだけだが。んー、やっぱりここで戻すには狭すぎるな」


 タツキは周囲を見渡しどうすればいいかと悩む。


「うむ、そうじゃな。確かに我が元の姿となれば、皆を押し潰すだけでは済まないだろう」


「ほな、どないするんや? まさかこのまま、みてるわけちゃうよな」


「ああ、そのつもりはない。だが、」


 そうタツキが悩んでいると、


「ちょっと、話に割って入って悪いんだけどさ」


 クルフはそう言いながら、近くにある大きな置物の物陰から姿を現した。



 そう、やっとの思いで東側の通路に辿り着き、邪魔にならないように近くの物陰に隠れその話を聞いていたのだ。



 クルフは、おもむろにクロノアの側に歩み寄る。


 クロノア以外の者は身構え警戒。


 それをみたクロノアは、慌ててクルフを庇う。


「あっ、大丈夫。クルフは、さっきまで敵だったけど。今は、味方みたいだから」


 そう言われるもタツキ達は疑いの目でクルフをみる。


「まぁ味方って言っても、お姉さまクロノアだけね」


「なるほど。それで、なんの用だ? この大変な時に、」


「……まぁいいか。そこの物陰で聞いてたんだけど、そこの浮遊生物を元の姿に戻す場所を確保したいのよね?」


 クルフはそう言いタツキに視線を向けるとニヤリと笑みを浮かべた。


「浮遊生物……。ああ、ブラグジオスのことか。そうだが、その口振りだと、何かいい方法でもあるのか?」


「あるのはあるけど……。ただ、ちょい手荒になるわよっ!」


 と言いながらクルフは、タツキ達の了承も得ず、自分が持つ鉄球付きの鎖鎌を勢いよく大きく振り回す。


「えっ!? 何をするつもりっ」


 それをみたクロノアが、クルフをとめようとするも時すでに遅し……。


 《爆裂乱撃 ハリケーンっ!!》


 そう言いクルフは、思いっきり反動をつけその勢いのまま南側の壁に目掛け鎖鎌を放り投げた。


 その鎖鎌は回転して、大きな風の渦を作りながら、縦横無尽……いや、乱雑な動きをしながら南側の天井および壁全体を破壊していく。


 破壊しきると綺麗さっぱり空とか外の森が丸見えだ。


 タツキ達は何も言えず、ただただ呆然と立ち尽くし、その光景をみていた。


「ねぇ、これだけの広さと高さあれば十分よね」


 悪ぶる様子もなくクルフは、ニカッと笑いそう言い放つ。


「……た、確かにこれなら……。だが、破壊して大丈夫か?」


「さぁ、どうだろうね。エヘヘ……」


「クルフ。お願いだから、事前に私たちに聞いてからにしてね。心臓に悪いし、」


 クロノアはそう言い、メッとクルフを軽く睨む。



 __てか、クロノア。確か貴女も、この城の天井に風穴開けたよね? それも二箇所も……。__



 そう言われクルフは、モジモジしながら上目づかいでクロノアをみる。


「お姉さまぁ。だってこのままぁ、ウダウダ話してたら色々と手遅れになる気がしたんだもん」


「確かにそれもそうや。タツキ、クルフを責めるよりも、感謝した方がええんちゃうんか?」


 そう言われタツキ達は、クルフが破壊した壁や天井を見回した。


「うむ、我も同意見じゃな。話をしている場合でもない。それに、これだけのスペースがあれば余裕で元の姿になれる」


「そういえばそうね。ありがとう、クルフっ!」


 クロノアにそう言われクルフは、ヨッシャァーと喜びのあまりガッツポーズをする。


「……それもそうだな。やり方は、気に入らない。しかし、以前、俺も似たようなことをした。その時は修復するのに、かなり時間がかかったが。まぁこの城は、大丈夫だろう」


 そう何気に放った言葉に対しクロノア達は、タツキをジト目でみた。


(えっと……。言ってることが、)


 そう思いクロノアは頭が痛くなる。


(おいおい、言いたいことは分かる。せやけど、そこ張り合うとこちゃうよな)


 クレイもまた頭を抱え、ハァ〜と息を漏らし呆れた表情を浮かべた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る