157話~ゲネスの厄日

 その頃ゲネスは、ガインの能力により鳴り響く轟音と揺れが激しい中、なぜか南側の祭壇へ向かい走っていた。


(クソッ!! こんなの背中にセットしやがって。あとで仕返ししてやるっ!)


 そうゲネスは、タツキにカプリアと合流しろと言われたのだ。



 __クレイを東側の広い通路に連れてくる少し前。タツキがこれからすることをこの場にいる者に伝える。


 そしてハウベルトからカプリアがこっちにくる予定だと聞き、それならゲネスに手紙を渡してもらおうという事になった。


 だが、すんなりゲネスが了承するわけもない。


 そのためタツキはゲネスの背中に爆発する魔法陣をセットした。……だが、それはビックリ罠箱であり踏んだり触ったりしなければ発動しない。


 それに大怪我するような仕掛けはないのだ。


 だがしかしゲネスには、無闇に解除したりちゃんと手紙を渡さないと爆発すると脅す。


 それと手紙をゲネスがみないように、カプリア以外みると吹っ飛ぶとも告げる。



 __ゲネスはそれを鵜呑みにし、現在必死でカプリアの方へと急いでいた。


 その途中ゲネスは、こっちに二人の女性が向かって来ているのがみえ立ち止まる。


「一人はさっきテリオス王子とハウベルトと一緒にいたグレイルーズの獣人ハーフ」


 そう言いながらカプリアへ視線を向けた。


「もう一人が、カプリア様か? 遠くでしかみたことがない。雰囲気がそんな感じだから間違いないだろう。てか、早く脱出しねぇと……」


 そう考え早く用を済ませようとアリスティアとカプリアの方へと駆け寄る。




 一方アリスティアとカプリアは、東側の通路の出入口に向かって走っていた。


 だが、自分の方に向かいくるゲネスに警戒し身構える。


「あれは、テリオス王子とハウベルトが捕らえた者。確か名前はゲネス。だがなぜここに?」


「ほう、あれがゲネスか。だが何ゆえこちらに向かって来ておる?」


「なぜかは分かりませんが、ゲネスは敵。ここは用心した方がいいかと」


 そう言いアリスティアは、カプリアの前に出ると庇うような体勢をとった。


 カプリアはそう言われ頷き向かってくるゲネスを警戒しみやる。


 そんなこととは知らないゲネス。二人の側までくると、なんの気なしに話しかけた。


 だが警戒していたアリスティアは危機感を感じ否応なしに、


 《闇雷やみいかずち ダークライトニング!!》


 そう唱えゲネス目掛け放つ。


 ゲネスはそれをみて「ちょ、待てっ!?」と言うも時すでに遅し……。青黒い稲妻が、まともにゲネスを直撃する。


「ウグッ、……」


 哀れゲネスは、口から煙を吐きそのまま地面にバタンと倒れた。勿論、全身黒焦げで髪は見事に逆立っている。


 アリスティアは生死を確認するためゲネスに近づく。するとゲネスの右手には頑丈な筒状のケースがあり、それを大事そうに握りしめていた。


 それに気づき、恐る恐るその頑丈な筒状のケースをゲネスの手元からはぎ取る。


「この筒のケースはいったいなんだ? その前になんのために、」


 不思議に思いながら筒状のケースを回しみた。


「うむ、アリスティア。少しやり過ぎではないのか?」


 カプリアはそう言いアリスティアの側までくる。


「すみません。ですが、この状況ではこれが得策かと思いましたので」


「そうかもしれぬが。まぁ良い、死んではいないようですし。それよりも、その筒は?」


「ゲネスが大事そうに持っていたのですが、」


 そう言いながら筒のケースをカプリアにみせる。


「ふむ、普通のケースではないようじゃな」


「そうですね。ですが、」


「アリスティア、その筒に何やら魔法陣が描かれておるな」


 そう言われアリスティアは筒状のケースに小さく描かれた魔法陣をみた。


「これは、気づきませんでした。ですが、この魔法陣はいったい?」


 その筒状のケースをアリスティアの手元から取りカプリアは、その小さく描かれた魔法陣をまじまじとみる。


「この魔法陣は……」


 カプリアはその魔法陣に危険性が感じられず触ってみた。するとその魔法陣が光を放つ。


 それと同時に別の魔法陣が筒のケースの底に現れる。


 そしてその魔法陣は光を発しながら筒のケース覆うように端から端へ移動した。


 その時、筒のケース全体が激しく発光する。その後その筒のケースは消えカプリアの手のひらの上に一通の手紙が現れた。


「カプリア様。これは、」


「手紙のようじゃな」


 カプリアは手紙を読む。


 そこにはタツキが今行おうとしていることと、危険が及ぶかもしれないためこの城を出るようにと書かれている。


 追伸で、ゲネスを向かわせた理由、ゲネスの背中の魔法陣のことも記載されていた。


「なるほどゲネスは、」


 アリスティアは額から一滴の汗を垂らしゲネスをみる。と同時に、やり過ぎたかと思い、ハァ〜っと息を漏らす。


 その後アリスティアは、ゲネスをひとまず逃げないように縄で縛り魔法で固定する。


 それを確認するとカプリアは、ゲネスに治癒魔法を施した。


 治癒を終えたのを見計らいアリスティアは、手紙に書いてあった通りの方法で、ゲネスの背中の術を解きそのあと眠らせる。


 そしてアリスティアがゲネスを抱えると二人は、東側の通路ではなく西側の出入り口を目指し駆け出した。

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