156話~動き出す〜東側の広い通路〜

 タツキは、クレイに説明していた。そう、ここに連れて来た理由と、これからやろうとしていることをだ。


「そういう事か。せやけど、なんでそんな大切な物を、俺に譲った?」


「なんでだろうな。だがあの時は、もうこの世界にこれないなら、必要ないと思った」


「なるほど。せやけど、そのお陰で俺はこの世界に……。まぁ実際、それだけの要因ちゃうやろうけどな」


 そう言うと、ふう~と息を漏らし再び話し始めた。


「それで、このとんでもない武器、どないするんや?」


 クレイはメニュー画面を開き、プリセットから【聖天闇冥の鎌】を選んだ。すると、一本ずつ両手に現れてそれを持つ。


「偶然やけど、この装備のプリセットにセットしとった」


 そして両手に持つ鎌をタツキにみせる。


「なるほど。それならプリセットを変えずに済むな。あとはクロノア次第か、」


 タツキはクロノアへと視線を向けた。


「ねぇ、本当に大丈夫なの?」


 そう言いながらクロノアは、増え続け巨大化しようとしているチビ悪魔をみる。その後タツキに視線を向けた。


「ああ、勿論だ。ラミアスが一時的に能力を解放すると言っていた。ただ、あとはクロノア次第ともな」


 タツキはそう答えたあと、ふとハクリュウのことが気になり、南側の祭壇があると思われる壁をみつめる。


(……多分、大丈夫だとは思うが。ラミアスが言った通りに伝えた。

 だが、一時的に能力を解放し、その力を使ったとして……それも二人……。いったいラミアスは、何を考えている?)


 そう思考を巡らせていた。


「うむ、我は、まだ納得しておらん。だが、この方法以外ないのなら仕方がない。それに、いい加減この姿のままでいるのも嫌なのでな」


 そう言い放つとタツキをジト目でみやる。


 それを聞きタツキは苦笑した。



 そうこう話してる間もチビ悪魔は増え続け、一箇所に集まり徐々に巨大化している。


 その姿は、既にチビ悪魔じゃなく。……そう、どうみてもデブピエロ悪魔だ。


「タツキ様。さっきも言いましたが。本当に、」


 ハウベルトはそう言いながらディアナを心配な表情でみつめる。


「ハウベルト。お前の気持ちは分かる。だが、ここは俺たちに任せて欲しい」


 そうタツキに言われハウベルトは、一瞬ためらったが、コクリと頷いた。


「分かりました。では、ディアナをよろしくお願いします」


 そう言いハウベルトは、タツキ達に軽く会釈をする。


 その後ハウベルトは、ディアナのことが心配で後ろ髪をひかれるも、この城をあとにした。


 そしてタツキ達は、ハウベルトがこの場を離れたことを確認すると準備を始める。

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