153話〜疑心と表面化

 現在、未だにガインの膨れ上がる強大な力により辺りは轟音と共に激しく揺れる。


 ノエルは、ハクリュウがなぜ動かずみているだけなのかと、ムッとしていた。


(この状況で、にゃんで助けにこにゃいわけ? 普通、みてるだけってありえにゃぁぁ〜いっ!)


 そう思いながら、ハクリュウを睨んだあと、再びこの状況をどうしたらいいかと考える。




 一方ハクリュウはというと__タツキに言われた通り、真面目に南側にある祭壇の戦況を見据えていた。



 そうハクリュウの長所でもあり短所、真面目で慎重すぎるうえに、なんでも内に溜め込んでしまう。


 そのせいか、さっきのバルムの時のように、自分が納得いかないことを言われたりされるとイライラし怒りだす。


 そのため、性格が全く真逆のクロノアとは、喧嘩が絶えないのだ。__お互い嫌いではないのだが……。



 片やバルムはハクリュウをチラッとみた。


(……んー、コイツハクリュウ。さっきから、俺の視線に気づいてるみてぇだが動かねぇ。

 何らかの方法で監視してるのは間違いないと思うんだがな。

 まぁいい。それよりも、ガインをどうにかしねぇとな。それにしても、ヤツタツキの言う通り待機していていいのか?)


 そう思考を巡らせる。



 そんな中ハクリュウは、ひたすら頭の中で考えを巡らせていた。


(タツキさんが、コイツバルムに気づかれないように、スキルを使って念話で本当の作戦を教えてくれた。

 とりあえず、サーチ監視スキルを発動しておいたからコイツの方は大丈夫だと思う。

 このプリセットに、忍者のスキルを補助で付けといてよかった。まさかここで使うとは思わなかったけどな)


 そう思いながら、フゥーっと軽く息を吐く。


(それに、さっき何かあった時のためにスキルカードを祭壇へ飛ばしておいた。……できれば、使わないで済めばいいんだけど。

 ……ハッ! そういえばミリアは?)


 瞼を閉じそう考えると再び目を見開いた。


 そしてミリアがいるであろう祭壇付近へ視線を向ける。


 するとミリアは、バルムの配下の者と戦っておらずお互いガインの方をみて震えていた。


(……。まぁ、一応ミリアも上位クラスだったはず。大丈夫だとは思うけど。……だが、まさか……ミリアが乃亜だったとはなぁ)


 そう思い心の中で深い溜息をつく。


 そしてその後、今の自分の状態を確認しながらガインの様子を監視する。




 その頃東側の広い通路では、未だにチビ悪魔が増え続けていた。


 ハウベルトはディアナを心配そうにみたあと、自分の側で拘束され横たわるゲネスに視線を向け考える。


(ああ、どうしたらいい? 流石にテリオス王子にゲネスをとまで言えなかった。

 まぁいいかぁ。それよりもチビ悪魔は、増え続け一部が融合している。前は、召喚だけだった。それなのに、なぜ?)


 そう思いながら中庭側の出入口の方を向いた。


(轟音と揺れがさっきより激しくなって来てる。本当に大丈夫なのか……。ただこのままここで、タツキとかいうヤツを何もせず待っていても?

 それに間に合うのだろうか。もし――)


 そう自問自答しながら出入口をジーっとみている。すると出入口付近に数名の人影がみえた。


(やっと来たか。だが、まだ安心はできない)


 そう思うと立ち上がりその人影が中庭から通路側に入ってくるのを待つ。




 一方クロノアとタツキとブラグジオスは出入口を潜り中庭から東側の通路へと足を踏み入れた。



 クルフはというと、クロノア達に追いつけず、まだ中庭にいる。



 クロノアは通路に到着するなりディアナの方へ駆けより、それをタツキとブラグジオスが追った。


「ハウベルト。まだ、ディアナは起きないんだね」


 クロノアがそう問いかけるとハウベルトは頷く。


「それになんでチビ悪魔なんか召喚してるのよ」


 そう言いながら飛び交うチビ悪魔を目で追う。


 タツキは追いつき今の状況を把握しようとする。


「これは……。思っていたより厄介かもな」


「貴方がタツキか? いや、異世界の者であるならタツキ様と呼ぶべきか」


 そう言いながらハウベルトはタツキの方を向いた。


「呼び方はどっちでも構わない。それよりも、さっき俺がチビ悪魔を消し去った。それなのに、なんでまた召喚してる?」


「それはこっちが聞きたい。なんで、こうなった?」


 ハウベルトは俯き頭を抱える。


「うむ、なぜかか。我も、よう分からぬが。恐らくそのディアナとかいう者が所持している黒魔石の腕輪と、」


 そう言いブラグジオスは、フワフワ浮きながらディアナの側まできた。


「……この黒魔石のペンダントが反応して、」


「二つが共鳴し合ったという事か。いや、だがそれだけなら以前も似たようなことが起きている。その時は沢山のチビ悪魔を召喚しただけだったが」


「以前にも同じようなことがか。だが、いまはその時よりも……」


 タツキは、それを聞き思考を巡らせる。そして、ふと【封印】という二文字が頭に浮かんだ。


「まさか、クレイが持ってるあの武器に反応して、」


 そう思いつくとクレイがいる方角の壁をみつめる。


「クレイって、クレイマルスさんのことかな? そうだとして、なんでそんな武器を、」


 そうクロノアに聞かれタツキは、クレイも同じ世界の者であることを告げた。


「なるほど。そうなるとクレイマルスは、今まで異世界の者であることを偽っていたと?」


「いや、それはないだろう。口が堅いヤツだが。なんのメリットもないのに、そこまで自分を偽る理由がない」


「……まぁ、それはあとでクレイマルスに聞いた方が早いですね。それよりも、さっき言っていた武器が気になります」


 そうハウベルトに聞かれタツキは、このことを言っていいものかと一瞬だけためらう。


 だが、隠しきれないだろうと思い重い口を開いた。


「その武器がなんなのか、か--」

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