150話〜謎の女性と退却と待機と
ここは名もなき城近くの森。
城内の中庭は、未だに緊迫した状況下にある。そんな最中、この森から城をジーっとみている人影があった。
「ここに、いる……」
その人影は女性のようだが、うさ耳らしき物がチラチラと木の隙間からみえ隠れしている。
(さっきの、アキからの連絡だと。リュウキ、あっ……じゃなかったのら。そうそう、この城でタツキをみかけたって言ってたのら。
一年前、アキに召喚された時は驚いたのら。あの時は、龍騎が珍しく連絡よこさないから、どうしたのかって思って久々にログインしたのら。
そしたら、なんでかこの姿になってた挙句に身長も容姿も変わってたのら。
前アパートに遊びに来てた時、なんかPCいじってた。恐らくその時、私のキャラで遊んでたのら。
まぁそれはおいおい、あとで問い詰めるとして。だけど召喚された時、アキがタツキの名前を教えてくれなかったら気づかなかったのら。
龍騎が、最近サブのタツキでログインしてるって言ってた。だから間違いなく、この世界にいるって分かったのら。でも、なかなかみつからなかったのら。
うん、間違いなくいる。あの龍騎が、こんな美味しい
そう思いながらその人影は、ニヤリと笑いジト目でみていた。
(私が向かっても、恐らくタツキの邪魔になるのら。それに、アキが知らせてくれた内部の情報だと。かなり状況が悪化してる。
だけど、中にいるメンバーを聞いた限り、大丈夫だと思うのら。
ってことで、ここで様子をみることにするのら)
そう考えが纏まるとその場に待機し再び城を監視する。
場所は城内に移り、ここは中庭がみえる東側の通路。チビ悪魔は更に増え続け一体化しようとしていた。
シャナはその様子をみながら何もできない自分が歯がゆく悔しかった。
そう思っているとカルテットがシャナの近くに姿を現す。
カルテットは、シャナに中庭で何が起きているのかを説明する。
「では、早急にここを離れた方がよさそうですね」
「はい、ですが……。今説明した者たちの他にも、テリオス王子とブラック国の者がこっちに向かって来ています」
「カルテット。そうですね、それならば、この場の状況を伝えないといけません」
そう思い考え込んだ。
「シャナ嬢。自分がここに残ります。ですので、」
「私がこの二人を連れてですか?」
「いえ、この二人は――」
カルテットは、テリオスとハウベルトにここの状況を伝えたあと、自分がドルマニールとミスティを連れ城を出るとシャナに伝える。
それを聞きシャナは、心配そうな表情をみせるが、今のこの状況ではこうするしかないと頷いた。
シャナは後ろ髪をひかれながらもここを後にし城から脱出する。
それを確認したカルテットは、拘束されているドルマニールとミスティを見張りながらテリオスとハウベルトを待つ。
そしてテリオスとハウベルトがこの場に辿り着くなり、カルテットは状況と中庭でみてきたことを説明しあることを提案した。
それを聞いた二人は、少し考えたあとカルテットの提案を承諾する。
だがハウベルトは、テリオスもカルテットと一緒にこの城から出るように促す。
テリオスは嫌だと反発した。しかし、ハウベルトに説得され渋々ながらもここを離れることみする。
その後カルテットとテリオスは、ドルマニールとミスティを二人で抱え城から脱出した。
ハウベルトはチビ悪魔の様子を監視しながらディアナを心配な表情でみている。
そしてハウベルトは、タツキ達が到着するのを待っていたのだった。
(……ディアナ。なんで目を覚まさない? いったいお前に何が起きた……)
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