149話〜その正体とは?

 ここは中庭がみえる東側の通路。ピエロのようなチビ悪魔は、入口のあたりまでくると中庭をキョロキョロと見渡す。


 その様子をカルテットは、ピエロのようなチビ悪魔に気づかれないように少し離れた場所でみていた。


「んー……いない、けど……アイツ、いる。見た目、変えたのか?……」


 そう言うとパッとその場から姿を消す。


 それをみたカルテットは、慌てて入口付近に向かい中庭を何度も見回した。


(まずい、あのチビ悪魔、どこに行った!?)


 すると、遥か左前方へと何度も消えては現れながら向かうピエロのようなチビ悪魔をみつける。


「みつけたっ!! だけど、どこへ向かってる?」


 そう思いながら、ふと左側をみた。すると、ハウベルトとテリオスがこっちに向かってくる。


(二人、こっちに向かって来てる。一人は、確かブラックのテリオス王子だったか。もう一人は? まぁいい。そうなると、こっちは大丈夫そうだ)


 カルテットは、そう思い南側の祭壇の方を向く。


(なるほど、このとんでもない地響きはあそこからか。だが、今はあのチビ悪魔を追うのが先)


 そう考えが纏まると指をパチンとならし姿を消す。そして、ピエロのようなチビ悪魔が向かったであろう場所付近の物陰まで転移した。




 場所は移り、ここは南側の祭壇より少し離れた北西側。


 ガインの武器が放つとてつもない魔力は、更に威力を増し周囲に激しい揺れと轟音が鳴り響く。


 ハクリュウとバルムはガインの様子を伺っていた。


 そう状況次第では自分がなんとかしないとならないからだ。


 片やタツキは、南側の祭壇をみながら悩んでいた。怪我を負っている自分がここにいては足手まといになるんじゃないのかと。


 そう考えていると背後で何か嫌な気配を感じ振り向く。


「……」


 と同時に驚き絶句した。


 そうピエロのようなチビ悪魔が自分の眼前にいて鋭い眼光で睨んでいたからである。


「おいっ、リュウキ! クロノアをどこに隠したっ!!!!」


 タツキは一気に青ざめた。そして顔を引きつらせながら、恐る恐るハクリュウの方に視線を向ける。


(クッ、ちょっと待て。ここにはハクリュウが、)


『リュウキ』と聞きハクリュウは驚きタツキの方を向く。そして辺りを見回してみる。


「あれ? 今、リュウキって聞こえた気がしたけど」


 そう言うとタツキを擬視した。


「ハ、ハクリュウ。いや、お前の、き、聞き違いだっ」


「何を言っている? お前が、」


 ピエロのようなチビ悪魔がそう言いかける。タツキは、慌ててピエロのようなチビ悪魔の口を塞ぎ捕まえようとした。


 だが怪我をしているタツキでは、捕まえることができず。……捕まえるすんでの所でピエロのようなチビ悪魔にヒラリとかわされ逃げられる。


「タツキさん、もしかして……」


 ハクリュウは、もしかしたらリュウキなのかと思いタツキの側に歩み寄った。


 それをみたタツキは、顔中から汗を大量に流し焦っている。


 そう突然、目の前に現れたピエロのようなチビ悪魔に自分のメインキャラ名を言われた挙句にハクリュウにバレたからだ。


「ハクリュウ、これには色々と事情が」


「なるほど。それで俺のこと知ってたんですね。もしかしてサブですか?」


 そう聞かれタツキは頷く。その後、簡単に説明する。


 そんな中ピエロのようなチビ悪魔は、自分を無視しているタツキに対し腹を立て小さな黒炎を吐いた。


 タツキはそれに気づくも避けきれず、髪の毛を黒く焦がす。


 その後ピエロのようなチビ悪魔は、何もなかったかのように話し出した。


「理由は、分かった。だが、クロノアはどこだ? 似た気配はするけど違う」


「それは、どういう事だ? ここにクロノアがいるって……」


 それを聞きタツキは辺りを見渡してみる。


「もしかしてクロノアって、」


 ハクリュウはそう言いながら少し離れた北側にいるクロノアを指差す。


「今はクロノアだけど。昔はマリースって名前だったらしい」


「なるほど、あのマリースか」


 そう言いタツキはクロノアの方を向くとステータス画面を確認する。


「クロノア・マリース・ノギア。……どういう経緯かは分からないが。親友の名を貰うとはな。そうなるとアイツクロノアは、ゲームから退いたってことか」


「本物のクロノアがいない。……じゃ、我はどうすれば良い?」


 それを聞いたピエロのようなチビ悪魔は、急に不安な表情になりタツキをみた。


「そうだな。そうもともとお前は、漆黒の魔龍ブラグジオス。洞窟の祭壇で召喚され、龍の紋章を神からさづかった者に仕えなきゃならないはず」


「だけど、お前が黒魔石のペンダントにこの姿のまま封印した」


「ああ、だがあの時はこうするしかなかった。事情が分かって、お前は封印を承諾したはずだ」


 そう言われブラグジオスは頷き考え始める。


 その後タツキは、なんとかブラグジオスに説明して納得させた。そして今ある状況を、ハクリュウと共に説明する。


 それを聞きブラグジオスは少し考えたあと口を開いた。


「ほう、確かにこの状況はまずいかもしれん。だが、」


 そう言いかけ東側の通路を指差す。


「あの場所で、我の魔力の蓄積により増えた分身が召喚されておる。あれは厄介、我の言うことを聞かん」


 フワフワと浮きながら小さな黒い羽根をパタつかせタツキとハクリュウをみる。


「このままだと、増えたチビ悪魔が一つになり大変なことが起きるだろう」


 それを聞いた二人は青ざめ、ハクリュウ達の様子をチラチラみていたバルムも驚く。


「おいっ! なんなんだ、この状況は? 二箇所でとんでもないことが起きようってのか」


「ああ、そうらしいな。さて、どうするか」


「リュ、あ、タツキさん。ここは俺が見張ってるので、東側の通路に向かってください」


 そうハクリュウに言われタツキは少し考えたあと頷いた。


「そうだな。じゃあここは、お前とバルムに任せる。俺は、クロノアを連れていく」


「なんでクロノアを?」


「ちょっと考えがあってな。成功するかは分からない。だが、やる価値はあるはずだ」


 タツキはクロノアの方をみたあと東側の通路へと視線を向ける。


「そうなんですね。もしこっちが大丈夫そうだったら、あとからそっちに向かいます」


「悪い、ガインを助けることができたら俺はここから即退散させてもらう。それに、今回のことを、」


 そう言いながらバルムの表情が段々と険しくなった。


「このことが納得できずに調べるってことか?」


 タツキにそう問われバルムは頷く。


「ああ、もしかしたら俺も騙されてたかもしれねぇ。それも踏まえ調べるつもりだ」


 それを聞きタツキは口角を上げ微かに笑う。


 その後タツキはブラグジオスと共にクロノアの元へ向かい。ハクリュウとバルムはガインの様子を監視する。




 一方その様子を物陰からみていたカルテットは、話の内容を把握し考え込んでいた。


(なるほどそういう事か。そうなると、ここにいるのは危険だ。あのチビ悪魔たちは、あの者たちが恐らくなんとかしてくれるだろう。

 他人任せになってしまうが、俺がここにいても邪魔にしかならない。

 そうなると一旦、東側の通路に戻りシャナ嬢と合流してあの二人ドルマニールとミスティを連れ、この城を脱出した方がよさそうだな)


 そう思いカルテットは指を鳴らすと、東側の通路へ転移する。




 __そして城内に更なる緊迫した空気が増していくのだった。

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